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統合失調症とは脳の混乱
統合失調症は簡単に言えば「人間が持つ様々な感情をうまくまとめることができない」病気です。皆さんの統合失調症のイメージとはどういったものでしょうか?
なんだか怖い病気・・・殺人犯がよく統合失調症だったって言われているから・・・
例えばテレビや新聞で殺人などが起こると「犯人は統合失調症だった」というような内容があったりして、(患者が)怖い病気、近寄りがたい病気という病気の中でも比較的負のイメージが強いのではないでしょうか?
実は私もそう思っていました。でもそれは間違いであるということを学び、反省しています。
ここでは、統合失調症とはいったい何なのか?どんな原因で起こるのか?治療法はどんなものか?について説明したいと思います。
脳の混乱
「現実」と「空想」のあいだ
統合失調症は「人間が持つ様々な感情をうまくまとめることができない」病気で脳が混乱状態になっている病気とも言えます。
私たちの脳は「現実」と「空想」が入り混じった状態になっていますよね。例えば「東大生を夢見る高校生」の「現実」と「空想」の境目はわかりますよね。
「アイドルとデートするオタク」の「現実」と「空想」の境目はわかりますよね。
統合失調症の陽性症状
ではこれはどうですか?「上司に嫌われている社会人」。「現実」と「空想」の境目はわかりますか?
あなたが社会人として、その境目を判断することはできますか?正直、上司に聞いてみないと「現実」か「空想」かわかりませんよね。
答えは分からないでいいのです
統合失調症およびその予備軍は上司に一回注意されただけで「上司に嫌われた」と認知し、以後、上司から「お前はバカだ」「会社から消えろ」といった幻覚幻聴が聞こえたり、「上司が私に対して会社を辞めさせるように仕組んでいる」という被害妄想を抱くようになります。
一回怒られると、ああ、もうダメだ・・って思ってしまうこと、あるなぁ・・・。
ここでいったん整理します。「現実」は「上司に注意された」それだけですよね。社会人は注意されることなどたくさんありますから、ありふれた光景とも言えます。
そこから先が患者の空想です。嫌われている。バカだ消えろと言われている気がする。自分がいなくなったほうが上司は喜ぶに違いないなど。
これら「空想」を「現実」と勘違いしてしまうのが統合失調症です。上司は私のことを嫌っている。
それを前提として行動しますので、自然と避けるようになったりします。
そうすると人間関係がどんどん悪くなっていきます。
この状態を「生きづらい」と私は呼んでいます。このような幻覚や妄想は統合失調症の陽性症状と言われています。
統合失調症の陰性症状
今の私の感情はなんだろうか?楽しいのか、悲しいのか、辛いのか、面白いのか・・・?
それがわからなくなって表面に出てきている表情なり行動なりが不自然に見えることがあります。
無感情に見えることがあります。感情の障害、感情の混乱です。
また、何もする気が起きない。ただ寝てばかり。という意欲の障害もあります。
何もする気が起きない。ずっと寝てるのも辛い。何をしても辛い。ならば死んでしまおう。と思ったこと、僕にはあるよ。
こういった感情の障害、意欲の障害を統合失調症の陰性症状と呼びます。
身近にある統合失調症
統合失調症の発症率は1%と言われています。つまり100人に1人。満員電車の中にいれば電車一両の中の誰かは統合失調症。
まだ骨折した人を見かけるほうが難しいかもしれません。あなたの身近にもいるかもしれません。
それだけ身近な病気なので、特別でもなんでもないのです。ましてや、その病気に対する知識がないまま差別をするといった行為は許されないと思います。
考えられる原因
統合失調症を発症する原因は、今のところわかっていません。ただし、原因と考えられるものがあります。
また、統合失調症が生育環境に原因があるという学説は現在では否定の傾向になっています。
①遺伝
統合失調症は遺伝的要因があります。親が統合失調症だったら子は10%の確率で発病するそうです。しかし、それでも10%ですから、原因を特定するには不十分です。
②ストレス
進学・就職・結婚など、人生における転機が発症のきっかけになっているといわれています。
統合失調症の診断
わかってねぇことだらけやな。それにも関わらず100人に1人は苦しんでいるんか・・・。統合失調症について本気で研究した人っておらんのかな・・・。
統合失調症の原因を特定することは難しいものの、診断方法を追求した研究者はいました。
東北大学の松澤先生です。先生は脳ドックに使われるMRIを使用して、統合失調症の診断(詳しくはこちら↓)を行っておりましたが、この診断法は普及せずに、未だに対話、カウンセリングによる診断が行われています。
統合失調症患者の脳内(ドーパミン仮説)
統合失調症の症状は上に掲げたとおり(陽性症状と陰性症状)です。では、脳内で何がどうなって、このような現象が起こるのでしょうか?実はこれもわかっていません。ただし、現在有力視されている仮説があり、現在のお薬はこの仮説に基づいて処方されています。それが「ドーパミン仮説」です。
ドーパミン仮説を理解するためには、神経と神経伝達物質に関する知識が必要です。
神経と神経伝達物質
神経は体中に張り巡らされた電気回路のようなものです。
神経というのは長い導線だと思ってください。長い導線は脳の中を縦横無尽に走っています。脊髄を通って脳から伸びているものもあります。
導線は一本で出来ているわけではなく、複数本で出来ています。導線一本一本を専門用語で「ニューロン」と呼びます。
これら導線をつなぐ役割をするのが神経伝達物質です。実際にはつながっているわけではなく、神経伝達物質は片方の導線から発生し、小さな空間(シナプス)を漂ってもう片方の導線に届きます。
つまり、ニューロン一本一本が導線で神経伝達物質はON/OFFスイッチみたいなものたいね。神経伝達物質が受容体に達したときにONになる。こうして、ON/OFFを上手に制御して皆生きているわけやな。
私たちが熱いものに触ると手を引っ込める反射と呼ばれる現象は、刺激が脳に伝わり、脳から「離れなさい」という指令が伝わる回路が完成したために起こるのです。
この、ON,OFFスイッチを担う物質の一つにドーパミンがあります。ドーパミン仮説は、ドーパミンが過剰に放出されたり、放出量が少なかったりすることにより、陽性症状や陰性症状が現れるのではないか、というものです。
脳内におけるドーパミンの関与する部位と、その部位でのドーパミンの働きに異常があると、次のような症状が現れるといわれています。
中脳辺縁系→幻覚・妄想など陽性症状
中脳皮質系→無為・自閉など陰性症状
黒質-線条体系→パーキンソニズム・錐体外路症状
中脳辺縁系でドーパミンが過剰に放出されると統合失調症の陽性症状が現れ、中脳皮質系という神経回路でドーパミンの放出量が低下すると統合失調症の陰性症状が現れるといわれています。
統合失調症の人はON/OFF制御がうまくいかなくて陽性症状や陰性症状がでる。
ドーパミン仮説を裏付けた現象
パーキンソン病と呼ばれる病気があります。これは黒質に異常が起こって、神経細胞が減少したため、そこで作られるドーパミンが減少し、黒質-線条体間の神経伝達が上手くいかなくなる病気です。筋肉のこわばり、体の動きが小さくなる、姿勢の変更がスムーズにいかなくなるという病気です。
このパーキンソン患者にドーパミンの増加を促すレポドバという薬を投与されたパーキンソン患者に陽性症状に似た副作用が見られました。このことから、統合失調症にはドーパミンが関与しているというように考えられるようになりました。
統合失調症の薬
脳内におけるドーパミンの働きを制御する(機能異常を抑える)アプローチとして、ドーパミンが働く神経系(中脳辺縁系など)の受容体の働きを遮断する、ブロックするなどの方法があります。その受容体ブロックを担うのが統合失調症の薬です。
神経伝達物質は、神経の働きのON/OFFスイッチの役割を果たすたい。
ほんなら、そのスイッチに何らかの異物を置いて、スイッチを働かなくさせれば、ドーパミンが働き過ぎて、幻覚が起きるなどの症状も減ってくるというわけやな。
まとめ
統合失調症は「人間が持つ様々な感情をうまくまとめることができない」病気、すなわち脳が混乱してしまっている病気です。現れる症状として幻覚・妄想などの陽性症状、意欲の低下などの陰性症状があります。発症の原因には遺伝、環境の変化などが挙げられますが、よくわかっていません。
統合失調症は100人に1人が発症するといわれる病気です。珍しい病気でもないのです。(統合失調症に関する)知識のない状態で漠然とした不安から、当該患者を差別することは許されない行為だと私は思います。
統合失調症が発病しているとき、脳内では、神経伝達物質であるドーパミンの機能異常が起こっているといわれています。そのため、ドーパミン受容体を遮断することによって、ドーパミンが働きすぎるのを抑える薬があります。
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