統合失調症は治ると断言した医者の話

資料請求番号:TS64 DE81 DE83

あいまいな診断から科学への言葉に惹かれて松澤先生の心の病気の治療法を勉強してみた。

Bookoffで「心の病は脳の傷」という本を見つけました。その中の一文に「あいまいな診断から科学へ」という項目に惹かれ即購入、じっくり読んでみたので、その内容を報告し、感想を書いていきたいと思います。

本の紹介

書名:こころの病は脳の傷(副題:うつ病 統合失調症 認知症が治る)
著者:田辺 功先生 話す人:松澤大樹先生(東北大学名誉教授・医学博士 国見ケ丘未来クリニック院長)
ISBN:978-4-89013-630-8
2008年12月16日 初版発行

本の概要

概要に入る前に本書の最初の一文を紹介します

この本を手に取った患者さんや家族は非常に幸運です

この一文から松澤先生の精神科医療に対する強い自信の念を感じます。

本書は精神科の重要な病気である統合失調症、うつ病、認知症の治療をテーマにした本であり、東北大学名誉教授、松澤大樹先生が上記病気に関して、脳の中を見ることで原因を突き止め、治療法を確立した。その具体的な治療法と治療効果についてまとめた本です。

本記事の流れ

本記事では、本書に記されている統合失調症の現実について説明し、松澤先生が開発した治療法についてまとめます。そして治療法の現在(2017年)についてまとめます。その中に「うつ病当事者」の視点から私の感想を挟んでいきたいと思います。
※2017年5月現在、松澤先生の治療法は受けることができません。その経緯も本記事内で説明していきたいと思います。

統合失調症について

症状

私は過去の記事にて統合失調症について紹介し、この病気は脳の混乱であるとまとめました(詳しくはこちら)。
本書では統合失調症について次のようなことが記されています。

脳内での情報処理が混乱し、思考や行動、感情を統合する能力が低下する病気という意味で、2002年に統合失調症となりました。

この病気は以前、精神分裂病と名付けており、患者さんや家族から偏見や差別を受けるとして名前が変わったのです。
そして、この病気についてどの精神科の教科書にも

統合失調症は簡単には治らないので、十分に休養し、回復の度合いを見る必要がある。

と書かれています。また

急性期が収まると、逆にエネルギーが落ちる消耗期が続き、それが徐々に回復していきます。回復期は年単位のもので、しかもその間には、いろいろなできごとをきっかけに、症状をぶり返す可能性があります。

とあります。

統合失調症の診断方法

診断方法について、本書では以下のように書かれています。

世界各国とも、統合失調症の診断は患者さんの訴えをもとにするだけで特別な検査をするわけではありません。患者さんがウソをついているかもしれませんから、精神科医はなかなか「治った」とは言ってくれません。したがって、一度統合失調症と診断されると患者さん自身も不安になり、しばしば体調を崩し、通院や入院を繰り返しがちです。ブラブラした生活のため家族も持て余し、就職や結婚も難しく、なかなか社会復帰できないのが現実です。

ディープル

冷静になって考えてみると、お医者さんとちょっと話した結果、統合失調症だねぇ。と言われて一生を持て余すなんてものすごく怖いよ・・・

しかし、これが現実です。今の世の中、血液検査・尿検査・検便・粘膜採取・レントゲンなど様々な病気の検査方法がありますが、脳の病気だけは、「対話」という診断だけで病気が決まったり決まらなかったりするわけです。だから一度診断された患者さんに対してお医者さんも「治った」とは言えず、せいぜい「改善した」「寛解した」だとしか言えないのだと思います。
それも致し方ないといえないこともないです。脳の病気を検査するのに針を刺して何かを採取することはできないですし、体の中の情報を持った物質が頭から排泄されることもありません。それだけ脳の様子を調べるということは難しいのだと思います。
ところが松澤先生は「統合失調症は治るんだ」「治るよ」「治ったよ」と断言するのです。そんな自信はどこからやってくるのでしょうか?ここで松澤先生の開発した「MRIを用いた松澤の断層法」が登場するのです。

MRIを用いた松澤の断層法についての科学的な説明はこちら

松澤先生の業績1:統合失調症・うつ病・認知症は同じ病気であることを発見した

現在の精神科の代表的な病気である統合失調症・うつ病・認知症は別々の病気として扱われています。例えばうつ病はセロトニン不足説、統合失調症はドーパミン仮説、認知症は脳の萎縮が原因とされていましたが、松澤先生は、これらは同じ病気の亜種という説を唱えました。その根拠となる事実は「統合失調症の患者は必ずうつ病を合併している」というものです。本書ではこの事実を以下のように表現しています。

松澤先生を受診した患者さんのなかで、統合失調症単独という患者は一人もいませんでした。これに対し、うつ病の患者さんも9割は統合失調症を合併していましたが、うつ病単独と見える患者さんもいました。ところが、松澤先生が丁寧に調べなおした結果、どの患者さんにもやはり共通して統合失調症があることがわかりました。

上記事実から、松澤先生はあらゆるうつ病、統合失調症、大うつ病、躁鬱病、解離性精神障害、ひきこもり、若年性認知症をすべて混合型精神病と名付け、その亜種として躁病、統合失調症優位型、うつ病優位型と定義しました。

松澤先生の業績2:松澤の断層法により、3種の精神病患者の脳には共通の特徴があることを発見した

本書にこのようなことが書かれています。

松澤先生は東北大学の教授として、77年からX線CT、80年からPET、83年からMRIを自由に駆使して、多数の患者さんの脳を撮影してきました。その結果主な三つの精神病の患者さんの脳には共通の特徴があることを発見しました。脳の決まった部分に傷があり、その傷の大きさや回復が病気の症状と密接に関係することを突き止めたのです。

三種の精神病とはうつ病・統合失調症・認知症のことです。松澤先生は多数の患者の脳の写真から三種の精神病どの患者さんにも脳の扁桃体に傷や穴があることを突き止めたのです。これはいままで「対話」でしか診断できなかった精神病が「画像診断」によって診断できるようになったということです。これは大きな進歩だと思います。

ストーク

「実際に観察した」という事実を突き止めるという仕事はな、理工学の世界でも技術上すごい難しいことたい。例えば、金属製の配管や容器の中で流体がどのように運動しているのかを見るにはどうすればええか?ガラスの窓をつける?ばってん、中の流体がガラスを腐食させたりするものやったり1000℃以上の高温やったら難しいやろ?
胃や腸の中を見る技術は確立されているけど、患者にものすごく負担をかけるやんか。ましてや頭蓋骨を割って脳の中を観察するなんてできるわけないたい。
松澤先生はそういった不可能をMRIの撮影法を工夫することで可能にしたんや。そして「実際に観察した」という事実は、そこで何が起きているのか誰が見ても同じように解釈できるけん、極めて強い根拠になって、学問の世界で実績に結びつくたい。

ディープル

でも、この本は2008年に出された本で、2017年の今頃には松澤先生の画像診断法がメジャーになっているはずだよ。どうして、未だに「対話」だけの診断なの?

ストーク

それがなぁ・・・学問の世界の闇というかな・・。先生の研究は認められなかったからたい。

学問的に認められなかった松澤先生の研究

「脳の異常を見た」という事実があり、その脳を持つ患者さんが精神病で苦しんでいるという事実もあるにもかかわらず、2017年現在も(この本の初版は2008年)画像診断がされていません。なぜなら、これだけ具体的かつ美しい論証を得たにもかかわらず、松澤先生の業績は学問的に認められなかったためです。
本書には、このように記述されています。

脳や精神病の研究者や医師たちは松澤先生の発見をあまり理解しようとしているようには見えません。「松澤の断層法」は90年の東北大学研究所紀要(英文)の論文になっていますが、医学や科学分野の権威ある国際専門誌には未掲載です。有力な研究者は権威ある雑誌しか評価しませんから、学問的には認められていない形になっています。専門誌は同じ分野の研究者に論文のチェックを依頼しますが、世界の精神科医は、自分たちが一生かけてきた病気が、そんな簡単に解明されたとは信じたくないので「こんな非常識な論文は載せられない」と拒否するのです。常識が間違っているときにしばしば起きる困った現象です。

実際に観察した事実に加え、多数の診断実績があるにも関わらず、東北大だけでしか認められなかった松澤先生の研究。もし、国際専門誌に掲載されていて松澤断層法がメジャーな研究になっていたら、もっと多くの患者や病気かもしれないと悩み苦しんでいる人が救われていたかもしれません。

ディープル

自分が病気かもしれないって悩むのは本当にもう嫌だ。病気か、病気じゃないか、わかった状態で生き方を考えたい。自分に合っているか合っていないかわからない集団で生活するのが苦しくてたまらない。

そう考える患者さんも多いと思います。

ストーク

これなぁ・・・今の精神科医がMRIを導入したり、検査したりする技術を学んだりするのがめんどくさいだけなんやないの?対話だけで診断書かける現状にすがりたい医者が少なからずおるんやないかって俺は思うたい。

この考えもあるかもしれません。これは精神科ではなく、耳鼻科での経験ですが、手術の腕前と病気に関する知識が豊富な人とそうでない人がいました。
「あ、この人は患者のためを想っていない医者だ」
「この人は手術が下手だ。しかも私の質問に的確に答えない。」
という医者が存在するのです。同じ学位・資格を持っていても、知識レベル、技術、そしてお客様(患者)を想う気持ちが人によってまちまちだというのはどうやら医学の世界でも例外ではないようです。

松澤先生の現在

松澤先生は1926年生まれ。今年91歳になります。2004年から松澤式診療を続けてきましたが、2017年3月を以て閉院、診療を引退するそうです。国見ケ丘未来クリニックのホームページ(http://mirai-clinic.net/index.html) の挨拶文に以下のような記述がありました。

院長の高齢化による体力の低下、後継者不足などの理由により、断腸の思いで診療を断念いたします。

もう、松澤先生の治療を受けることのできる人はいないということです。心の問題という難しい問題に対して、極めて論理的で筋道の通った理論を組み立て、実践し、患者を救ってきた松澤式診療が過去のものになってしまう。もしかしたら消え去ってしまうかもしれない。非常に残念です。

ストーク

当時の社会情勢、周囲の都合によって学問としての真実が捻じ曲げられたという過去はたくさんあったけん、これもその一つやと思う。後になってから松澤先生の方法が見直されて普及すれば、多くの人が救われると思うたい。それは何年後になるんか・・・10年後かもしれんし、100年後かもしれん。

1 Comment

CAL

この本を初めて手にしたとき、心という目に見えない病気を、MRIという画像によって目に確かに見え、わかるものとしてとらえられたことは素晴らしい発見だと思った。
適当に与えられるうつ病や統合失調症に対してのお薬が、いかに患者の心だけでなく、体をむしばんでいくかを考えた時、薬の効果を適切に見ていけることはすごい。それは必要な薬だけを処方してもらえるということであり、不必要な薬に侵されなくて済むということである。
これは医学会ならずとも、製薬会社との関連も完全に敵に回しかねない、つまりつぶされる危険性がある、本物だ!

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