2槽タンクでは、液がたまる場所が2つあるため、液位も $h_1$ と $h_2$ の2つになります。
この記事では、図を読みながら「流入 − 流出 = 蓄積」という物質収支を各槽に書き下し、最終的に2本の常微分方程式になるところまでを丁寧に追います。
今回は制御則には立ち入らず、物質収支にもとづくモデル化そのものに絞って整理します。

2槽になると、なぜ式も2本になるのか

この回の主役は、制御ではなく物質収支です。

シマナ

1槽タンクなら、液位が1つだから式も1本、というのは分かるのよ。

ストーク

そこまでは素直に見えるたいね。2槽になっても、まず見ることは同じたい。どこに液がたまるかを数えるだけでよか。

シマナ

液位が2つあるなら、追いかける状態も2つあるってことだよね。

ストーク

その通りたい。上槽の液位 $h_1$ と下槽の液位 $h_2$ があるなら、それぞれの変化を表す式が必要になるばい。

タンクが1つなら、時間とともに変わる代表的な状態量は液位1つです。ところが2槽タンクでは、上槽と下槽にそれぞれ液がたまるので、液位も2つになります。

すると「流入 − 流出 = 蓄積」という物質収支を、それぞれの槽に対して別々に書く必要が出てきます。その結果として、液位 $h_1(t)$ と $h_2(t)$ を未知関数とする、2本の常微分方程式が現れます。

大事なのは、式が2本になる理由が数式の都合ではなく、物理的に蓄積の場所が2つあるからだ、ということです。今回はこの点を、図と収支の対応を確かめながら丁寧に見ていきます。

まず図を読む

上槽・下槽・流量・液位・抵抗の役割を、先に整理しておきます。

2槽タンクを上槽と下槽の2つの制御体積として分け、流入 qin、槽間流量 q12、流出 qout、液位 h1・h2 の対応を示した図
2槽タンクでは、上槽と下槽を別々の制御体積として見ることで、液位 h1 と h2 に対応する物質収支を分けて書ける。式が2本になる理由を、図の切り分けから先に確認する。

シマナ

図を見ると、配管もバルブも矢印も出てきて、急に要素が増えるのよね。どこから読めばいいのかな。

ストーク

まずは欲張らずに二つたい。「どこに液がたまるか」と「どこを液が流れるか」。そこだけ見ればよか。

シマナ

なるほどね。液をためる場所は上槽と下槽の2つ、流れはその間と出口を見る、という順番で読めばいいんだ。

このモデルでは、上側のタンクを第1槽、下側のタンクを第2槽とします。第1槽には外部から流入 $q_{in}$ が入り、第1槽から第2槽へ向かう流れを $q_{12}$ とします。さらに第2槽から外へ出ていく流れを $q_{out}$ とします。

液位はそれぞれ $h_1$、$h_2$ です。また、各槽の断面積を $A_1$、$A_2$ とします。断面積は、「液位が少し変わったとき、体積がどれだけ変わるか」を決める量です。

バルブや流路抵抗は、液位そのものを直接動かす部品ではありません。役割は流量を決めることです。たとえば上槽から下槽への流れ $q_{12}$ は、液位差や抵抗の大きさに応じて決まります。つまり、図の中で「液位」と「流量」は別の役割を持っています。

バルブ開度は液位を直接動かすのではなく、流量を変える

ここを曖昧にすると、式の意味がぼやけます。

ストーク

「バルブを開けたから液位が下がる」と言いたくなるけど、式にすると一段はさまるたい。先に変わるのは流量ばい。

シマナ

バルブが直接さわっている相手は液位じゃなくて流量、ということかな。

ストーク

そうたい。流れやすさが変わって、その結果として出入りの差が変わる。液位はそのあとについてくるばい。

シマナ

因果関係を一段ずつ分けると、式が急に読みやすくなるのよね。

モデル化では、この因果関係をきちんと分けて考えます。バルブ開度や流路抵抗は、流量 $q$ に影響します。流量が変わると、ある槽に入る量と出る量の差が変わります。その差が蓄積を生み、結果として液位が変わります。

バルブ開度・抵抗の変化 → 流量の変化 → 物質収支の変化 → 液位の変化

この見方を持っておくと、液位変化の式を「流量差から出てくる式」として素直に読めるようになります。

第1槽の物質収支を書く

上槽に対して、流入 − 流出 = 蓄積 をそのまま当てます。

シマナ

第1槽では、外から入ってくる流量があって、下の槽へ流れ出していくのよね。

ストーク

そうたい。第1槽だけを取り出して見れば、入るのは $q_{in}$、出るのは $q_{12}$。その差が第1槽にたまる量になるばい。

第1槽に着目すると、流入は $q_{in}$、流出は第2槽へ向かう $q_{12}$ です。したがって物質収支は

$$q_{in} – q_{12} = \frac{dV_1}{dt}$$

と書けます。ここで $V_1$ は第1槽にたまっている液体の体積です。

第1槽の断面積 $A_1$ が一定なら、体積は液位 $h_1$ を使って

$$V_1 = A_1 h_1$$

と書けるので、

$$\frac{dV_1}{dt} = A_1 \frac{dh_1}{dt}$$

です。したがって第1槽の物質収支は

$$A_1 \frac{dh_1}{dt} = q_{in} – q_{12}$$

となります。

第2槽の物質収支を書く

今度は下槽に着目して、別の収支を立てます。

ストーク

ここで大事なのは、第1槽からの流れ $q_{12}$ が、第2槽ではそのまま流入になることたい。

シマナ

同じ流れでも、どの槽を見ているかで意味が変わるのよね。上では流出、下では流入。

ストーク

見る場所が変わると、同じ $q_{12}$ でも名札が変わるたいね。

シマナ

そのくらいの言い方なら分かりやすいのよ。

第2槽に着目すると、流入は第1槽から来る $q_{12}$、流出は外へ出ていく $q_{out}$ です。したがって物質収支は

$$q_{12} – q_{out} = \frac{dV_2}{dt}$$

となります。第2槽の断面積を $A_2$、液位を $h_2$ とすれば、

$$V_2 = A_2 h_2,\qquad \frac{dV_2}{dt} = A_2 \frac{dh_2}{dt}$$

なので、最終的に

$$A_2 \frac{dh_2}{dt} = q_{12} – q_{out}$$

が第2槽の物質収支になります。

2本の常微分方程式としてまとめる

状態変数が $h_1$ と $h_2$ の2つなので、時間発展の式も2本になります。

第1槽と第2槽の物質収支を並べると、2槽タンクの基本モデルは

$$A_1 \frac{dh_1}{dt} = q_{in} – q_{12}$$

$$A_2 \frac{dh_2}{dt} = q_{12} – q_{out}$$

です。これが、2槽タンク系の最も基本的な常微分方程式の形です。

断面積で割れば、液位の時間変化そのものを左辺に置いた形にもできます。

$$\frac{dh_1}{dt} = \frac{1}{A_1}(q_{in} – q_{12})$$

$$\frac{dh_2}{dt} = \frac{1}{A_2}(q_{12} – q_{out})$$

左辺は液位の変化、右辺は各槽における流量差です。つまり、この式は「各槽で何がどれだけたまるか」をそのまま時間変化として表したものになっています。

なぜ1本ではなく2本になるのか

数式の都合ではなく、物理的に「たまる場所」が2つあるからです。

シマナ

式を2本並べるところまでは分かったのよ。でも、どうしてそれが自然なのかは、もう一段ちゃんと言葉にしたいかも。

ストーク

物理から見れば簡単たい。液が別々にたまる器が2つあるなら、その中身の変化も2つ追う必要があるばい。

シマナ

なるほどね。状態量が2つあるから、その時間変化も2つ必要になるんだ。

ストーク

そうたい。つながってはいるけど、同じものではない。だから連立になるばい。

2本になる理由は、単に数式を2回書いたからではありません。液体が時間とともにたまる場所が、第1槽と第2槽の2つあるからです。

各槽の液位は、それぞれ独立した状態量です。第1槽の液位 $h_1$ が分かっても、第2槽の液位 $h_2$ が自動的に決まるわけではありません。逆も同じです。したがって、系の状態を表すには $h_1$ と $h_2$ の両方が必要で、それぞれに対して時間変化の式が必要になります。

もちろん両者は完全に無関係ではありません。$q_{12}$ を通じてつながっているので、第1槽の状態は第2槽へ影響します。しかし、つながっていることと、状態量が1つで済むことは別です。つながった2状態系だからこそ、連立の常微分方程式になるわけです。