ラプラス変換を使った電気回路・機械力学の微分方程式解法例~RLC回路やバネダッシュポット系の過渡応答解析~





ラプラス変換を使った電気回路・機械力学の微分方程式解法例~RLC回路やバネダッシュポット系の過渡応答解析~



資料請求番号:TS36 TS41 TS91

一般化した複雑な電気回路や機械力学の微分方程式をラプラス変換で解く

こちら↓の記事でラプラス変換の基礎的な説明と簡単な演習を行いました。

ラプラス変換の基礎と応用~簡単な電気回路・運動方程式を解いてみる~

今回は、ラプラス変換による微分方程式の求解に慣れてきた人のために、より一般化した、すなわち複雑な微分方程式の例題を取り扱っていきたいと思います。

RLC直列回路のステップ応答

こちらの記事ではRL直列回路を取り扱いましたが、今回はコンデンサCも含む、RLC直列回路を取り扱います。回路方程式は以下の通りです。
Ri(t)+Ldi(t)dt+1C0ti(t)dt=V0
さらに、今回はステップ関数Θを使用し、ある時刻t=0において、回路のスイッチを入れたとき、その応答はどのようになるか?を計算します。
Ri(t)+Ldi(t)dt+1C0ti(t)dt=V0Θ(t)
このようなステップや、後ほど取り扱うインパルスに対する過渡応答の解析と言うのはラプラス変換の得意とするところです。

上の式を微分します。ステップ関数は微分するとインパルス関数になります。
Ri(t)+Ldi(t)dt+1C0ti(t)dt=V0Θ(t)

Ld2i(t)dt2+Rdi(t)dt+i(t)C=V0δ(t)

さらに、両辺をLで割ったこの式をラプラス変換していきます。
d2i(t)dt2+RLdi(t)dt+i(t)LC=V0Lδ(t)

まず、1項目をラプラス変換すると以下のようになります。(※ここで?になった方はこちらをチェック!)
L[d2i(t)dt2]=s2L[i(t)]si(0)di(0)dt

求めるべき関数i(t)のラプラス変換をI(s)とおき、

L[i(t)]=I(s)

回路のスイッチを入れる瞬間t=0では電流が流れていないことから

i(0)=0anddi(0)dt=0

よって

同様に他の項もラプラス変換すると、以下のような代数方程式が得られます。1. L[d2i(t)dt2]=s2I(s)

2. L[RLdi(t)dt]=RLsI(s)

3. L[i(t)LC]=1LCI(s)

4. L[V0Lδ(t)]=V0L

s2I(s)+RLsI(s)+1LCI(s)=V0L

代数方程式を解きます。
s2I(s)+RLsI(s)+1LCI(s)=V0L

(s2+RLs+1LC)I(s)=V0L

I(s)=V0Ls2+RLs+1LC

I(s)=V0Ls2+Bs+ω02

このとき、
と置きました。

RLC直列回路の過渡応答は

b2=ω02B24=1LCR24L2

と置いたとき、b2の値によってその解の形が変化しますので、
b2>0, b2=0, b2<0に場合分けして
ラプラス逆変換を行い、解を求めます。

b2>0の場合

I(s)=V0Ls2+Bs+ω02

をラプラス逆変換します。変換表

出典:斎藤制海・徐 粒 共著,計測と制御シリーズ 制御工学 -フィートバック制御の考え方ー,第1版第1刷,2003年,pp.19
より、

L[eatsinωt]=ω(s+a)2+ω2

であるから、記号を置き換えて

L[eB2tsinbt]=b(s+B2)2+b2=bs2+Bs+B24+ω02B24=bs2+Bs+ω02

を得ます。

従って、求める電流の時間変化i(t)は

I(s)=V0L1bL1[bs2+Bs+ω02]

i(t)=V0L1beB2tsinbt

となります。

b2=0の場合

b2=ω02B24=0

ω02=B24
より、
代数方程式の解は以下のように変形できます。
I(s)=V0Ls2+Bs+ω02

I(s)=V0Ls2+Bs+B24=V0L(s+B2)2
ラプラス変換表から
L[tneat]=n!(s+a)n+1

L[teat]=1(s+a)2

L[teB2t]=1(s+B2)2

となるので、

ラプラス逆変換を行い、以下の解を得ます。

i(t)=V0LL1[1(s+B2)2]

i(t)=V0LteB2t

b2<0の場合

代数方程式の解を以下のように変形します。
I(s)=V0Ls2+Bs+ω02

=V0Ls2+Bs+B24{ω02B24}

さらに、

b2=ω02B24

と置いているので、

I(s)=V0L(s+B2)2(b2)

これをラプラス逆変換します。
ラプラス変換表には記載がありませんが、
L[1ωeatsinhωt]=1(s+a)2ω2

このような公式がありますので、今回のケースに当てはめて考えると

L[1b2eB2tsinhb2t]=1(s+B2)2(b2)

これによりラプラス逆変換を行い、解を得ます。

i(t)=V0LL1[1(s+B2)2(b2)]

i(t)=V0L1b2eB2tsinhb2t

機械力学(バネーダッシュポット系のインパルス応答)

次は、以下の方程式をラプラス変換によって解くことを考えます。
d2x(t)dt2=ω02x2γdxdt+Fmω0δ(t)

これは、質量mの物体にバネを取り付け、その物体に一瞬だけF/0なる刺激を与えたら物体はどのように運動するか?という問題です。一瞬の刺激ではなく、持続的に力を加えた場合の応答は

d2xdt2=ω02x2γdxdt+F0cosωt

で表現でき、この微分方程式を↓こちら↓
のページでルンゲクッタ法により解きました。
[blogcard url=”http://shimaphoto03.com/science/rk-vib/”]

δ(t)をインパルス関数と言い、ある時間t=t0の時だけ値が∞になって、あとはゼロになる関数です。この関数はラプラス変換をとると1になります。

従って、

d2x(t)dt2=ω02x2γdxdt+Fmω0δ(t)

として、初期条件

x(0)=0,dx(0)dt=0

のもと、それぞれの項をラプラス変換すると

1. L[d2x(t)dt2]=s2X(s)

2. L[ω02x]=ω02L[x(t)]=ω02X(s)

3. L[2γdxdt]=2γ(sL[x(t)]x(0))=2γsX(s)

4. L[Fmω0δ(t)]=Fmω0

となり、代数方程式
s2X(s)=ω02X(s)2γsX(s)+Fmω0
を得ます。これを解くと

(s2+ω02+2γs)X(s)=Fmω0

X(s)=Fmω0s2+ω02+2γs

となりますので、これをラプラス逆変換します。

変換表

出典:斎藤制海・徐 粒 共著,計測と制御シリーズ 制御工学 -フィートバック制御の考え方ー,第1版第1刷,2003年,pp.19
より、

L[eatsinωt]=ω(s+a)2+ω2

であるので、これを今回得られた代数方程式に合うよう変形していきます。

L[eγtsinω0t]=ω0(s+γ)2+ω02

=ω0s2+2γs+γ2+ω02
このとき、分母のγ2がが余計になるので、ω0を√ω02γ2と置き換えて、γ2を消去します。

L[eγtsinω0t]=ω0(s+γ)2+ω02

=ω0s2+2γs+γ2+ω02

L[eγtsinω02γ2t]=ω02γ2s2+2γs+γ2+ω02γ2

=ω02γ2s2+2γs+ω02

これにより、

L[eγtsinω02γ2t]=ω02γ2s2+2γs+ω02

の関係を得られるので代数方程式

X(s)=Fmω01s2+ω02+2γs

の逆ラプラス変換が可能になります。

X(s)=Fmω01s2+ω02+2γs

x(t)=Fmω0L1[1s2+ω02+2γs]

x(t)=Fmω01ω02γ2L1[ω02γ2s2+2γs+ω02]

x(t)=Fmω01ω02γ2eγtsinω02γ2t

これにより、バネーダッシュポット系の要素に対し、インパルスを与えたときの応答を求めることができました。

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