【基本情報技術者試験】第9回:プロジェクトマネジメント基礎を徹底解説!ウォーターフォールとアジャイル、WBS、リスク管理まで





【基本情報技術者試験】第9回:プロジェクトマネジメント基礎を徹底解説!ウォーターフォールとアジャイル、WBS、リスク管理まで




【基本情報技術者試験】第9回:プロジェクトマネジメント基礎を徹底解説!ウォーターフォールとアジャイル、WBS、リスク管理まで

前回(第8回)はセキュリティ分野を取り上げ、暗号や認証、マルウェアの概要などを学びました。今回は、プロジェクトマネジメントの基礎を詳しく解説します。ITシステム開発において、規模の大小を問わずプロジェクトを適切に管理する知識は非常に重要で、基本情報技術者試験でもマネジメント分野として頻出です。

この記事では、プロジェクトマネジメントの全体像や開発モデル(ウォーターフォール、アジャイル)、WBS(Work Breakdown Structure)やガントチャートを活用した進捗管理、品質管理リスク管理など、試験で押さえておくべきポイントを広く取り上げます。PMBOK(Project Management Body of Knowledge)の基本的な考え方にも触れながら、内容を整理していきましょう。


1. プロジェクトマネジメントとは何か

プロジェクトとは、「一定期間内に、独自の成果物を生み出すための一時的な取り組み」と定義されます。IT開発プロジェクトであれば、新しいシステムやサービスをリリースするのが目的です。そして、プロジェクトマネジメントとは、このプロジェクトを円滑に進めるために計画・実行・監視・コントロール・終結のプロセスを統合的に管理することを指します。

PMBOKによると、プロジェクトマネジメントには以下の10の知識エリアがあります:

  1. 統合マネジメント
  2. スコープマネジメント
  3. スケジュールマネジメント
  4. コストマネジメント
  5. 品質マネジメント
  6. リソースマネジメント
  7. コミュニケーションマネジメント
  8. リスクマネジメント
  9. 調達マネジメント
  10. ステークホルダーマネジメント

基本情報技術者試験では、これらすべてを深堀りするわけではなく、スコープ・スケジュール・コスト・品質・リスクあたりの基礎知識が頻出です。


2. 開発モデルの種類:ウォーターフォールとアジャイル

2-1. ウォーターフォールモデル

ウォーターフォールモデルは、開発工程を上流から下流へ順番に進める伝統的な手法で、「要件定義 → 基本設計 → 詳細設計 → 実装 → テスト → 運用・保守」という形で段階的に作業を行います。

  • メリット:工程ごとに成果物を定義しやすく、全体計画が立てやすい。大規模開発や硬い契約関係に向いている。
  • デメリット:後工程で仕様変更が入るとコストや工期の増大につながりやすい。初期段階で要件を完全に固めにくい場合はリスクが高い。

基本情報技術者試験では、ウォーターフォールモデルが最も代表的な開発モデルとして出題されます。各工程の概要やメリット・デメリットを把握しておきましょう。

2-2. アジャイル開発とスクラム

アジャイル開発は、「変化に対応しやすい」「顧客とのコミュニケーションを重視」する開発手法の総称です。短いスプリント(反復開発サイクル)を繰り返し、動くソフトウェアを早期にリリースしながら、フィードバックを取り込みます。

  • スクラム: チームが自己組織化し、短いスプリントごとに製品をリリース可能な状態にするフレームワーク。スクラムマスター、プロダクトオーナー、開発チームなどの役割分担がある。
  • XP(エクストリームプログラミング): テスト駆動開発やペアプログラミングなど、品質を高める実践を重視するアジャイル手法。

基本情報技術者試験では、アジャイルの特徴(反復・進化型顧客と開発チームの密な協力など)や、ウォーターフォールとの対比が問われることがあります。


3. スケジュールと進捗管理:WBSとガントチャート

3-1. WBS(Work Breakdown Structure)

WBSは、プロジェクトの作業を階層的に分割した構造図です。大まかに「要件定義」「設計」「実装」「テスト」といったレベルから、さらに細かく作業項目をブレイクダウンしていきます。WBSを作ることで、

  • プロジェクトで必要な作業を漏れなく洗い出せる
  • 各作業の範囲や工数を見積もりやすくなる
  • 責任の所在(担当者)が明確になる

試験では、WBSを作成する際の注意点(作業範囲の抜け漏れ防止、作業粒度の適切化など)や、ガントチャートとの連携が問われることがあります。

3-2. ガントチャートとクリティカルパス

WBSで洗い出した各作業の工数や依存関係をもとに、ガントチャートを作成します。ガントチャートは、横軸に時間、縦軸に作業項目を取り、バーで各作業の開始日・終了日・進捗状況を視覚的に表示するスケジュール管理ツールです。

  • バー: 作業の開始・終了時刻を示す。
  • 依存関係: 作業間の前後関係を矢印などで表す。
  • 進捗率: バーを塗りつぶすなどで、実際の進捗を可視化する。

さらに、作業のネットワーク図を描き、全体工期を決定する際に重要なのがクリティカルパスです。クリティカルパス上のタスクが遅れると、プロジェクト全体の納期に直結します。試験では、「最長経路」=クリティカルパス、という概念を理解し、計算問題が出ることもあります。


4. 品質管理とテスト手法

4-1. 品質管理の重要性

品質管理は、プロダクトやプロセスが要求される品質を満たすように計画・監視・改善を行う活動です。コスト・納期・品質はプロジェクトの三大要素とされ、どれかを犠牲にすると他にも影響が出ることが多く、バランスが求められます。

基本情報技術者試験では、「なぜ品質管理が重要なのか」や、「品質を測る代表的な指標」(欠陥密度、顧客満足度など)に関する問題が登場します。

4-2. ソフトウェアテストの手法

品質を確保するうえで重要なのがソフトウェアテストです。代表的なテスト手法として、

  • 単体テスト: モジュール単位でのテスト。プログラム内部の構造を意識するホワイトボックステストがよく使われる。
  • 結合テスト: 複数のモジュールを組み合わせたときの相互作用を検証。ブラックボックステストの観点でも行う。
  • システムテスト: システム全体が要件を満たすかを確認。非機能要件(性能、セキュリティなど)も含む。
  • 受け入れテスト: ユーザ(顧客)側が最終的に検証する。ユーザ要件を満たしているかの確認。

試験では、「ブラックボックステストとホワイトボックステストの違い」や、「テスト工程の進め方」がよく問われます。V字モデル(要件定義と受け入れテスト、基本設計とシステムテスト、詳細設計と結合テスト、実装と単体テスト)も要チェックです。


5. リスク管理と変更管理

5-1. リスク管理のプロセス

プロジェクトには常にリスク(不確実な要素)が伴います。リスク管理では、リスクを特定し、影響と発生確率を評価したうえで、対策を計画・実行します。

  • リスク特定: ブレーンストーミングや過去の事例、チェックリストなどを活用して潜在的リスクを洗い出す。
  • リスク分析: 発生確率と影響度(損失規模)を定量化・定性化して優先度をつける。
  • リスク対応: 回避、軽減、転嫁、受容といった手法でリスクに対処する。例えば、外部委託や保険加入でリスクを転嫁するなど。
  • リスク監視: リスクの状況を継続的にモニタリングし、新たなリスクが出てきたら随時対応策を検討する。

基本情報技術者試験では、リスクマトリックス(影響度×発生確率)や、具体的なリスク対応策の種類が問われることがあります。

5-2. 変更管理とバージョン管理

プロジェクト期間中には、要件変更やスケジュール変更が生じる可能性が高いです。変更管理では、変更に伴う影響(工数・コスト・リスク)を評価し、承認プロセスを経たうえで確実に実施します。

  • 変更要求の受付 → 影響分析 → 承認 or 却下 → スケジュール・予算などの更新 → 実行

また、ソフトウェア開発ではソースコードやドキュメントの更新が頻繁に発生するため、バージョン管理ツール(Git, Subversionなど)を使い、誰がいつ何を変更したかを記録しつつ共同開発を行うのが一般的です。


6. コミュニケーションとステークホルダーマネジメント

ITプロジェクトでは、開発チームやベンダー、顧客、経営層など多くの人々が関わります。コミュニケーションマネジメントステークホルダーマネジメントの重要性を理解しておくことも大切です。

  • コミュニケーション計画: 報告頻度や会議体をあらかじめ決め、情報共有を円滑に行う。
  • ステークホルダー分析: プロジェクトに影響力を持つ人々を特定し、期待や利害関係を把握する。
  • 報告・連絡・相談(ホウレンソウ): 問題が起きたら早めに報告し、対策を協議する文化を整備する。

試験では、このあたりは「プロジェクトマネージャが果たすべき役割」として総合的に問われたり、事例問題で「コミュニケーション不足によるトラブル」などが登場することがあります。


7. まとめと試験対策のポイント

  • プロジェクトの定義と、PMBOK的な10の知識エリアの概要を把握する。
  • 開発モデル: ウォーターフォールの工程やメリット・デメリット、アジャイル開発(スクラム)の特徴を対比で理解する。
  • WBSとガントチャート: スケジュール管理の基本ツール。クリティカルパスとその算出方法を覚える。
  • 品質管理とテスト工程: V字モデルやテスト手法(単体・結合・システム・受け入れ)を押さえる。
  • リスク管理: リスクの特定・分析・対応・監視という流れ。回避・軽減・転嫁・受容の4つの対応策。
  • 変更管理とバージョン管理: 変更要求のプロセスを把握し、ソースコード管理ツールの意義を理解する。
  • コミュニケーション: ステークホルダーマネジメントと情報共有の重要性を認識する。

基本情報技術者試験では、用語の意味や基本手順が問われることが多い一方、午後試験ではある程度の事例や計算問題(クリティカルパスの算出、コスト見積りなど)が出題される場合があります。しっかりと用語を整理し、過去問や演習問題で応用的な問題にも慣れておくとよいでしょう。

次回(第10回)は、マネジメント・ストラテジ系の続きとして、経営戦略やビジネスとITの関係を扱います。3C分析やSWOT分析などの経営手法や、IT戦略立案、ビジネスモデルと情報システムの連携などを幅広く解説していきます。お楽しみに!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です