【基本情報技術者試験】第5回:ネットワーク基礎を徹底攻略!OSIモデルからTCP/IP、機器の役割まで網羅解説
前回(第4回)はOSとソフトウェアの仕組みについて学びました。今回は、ネットワークに焦点を当てます。現代のITシステムは、インターネットを始めとした複雑なネットワーク環境の上で動作しているため、ネットワークの基礎知識は基本情報技術者試験でも頻出分野です。
この記事では、OSI参照モデルやTCP/IPモデル、ルータやスイッチといった主要なネットワーク機器の役割、LAN・WANの違い、IPv4/IPv6の仕組みなどを総合的に解説します。午前試験・午後試験どちらにも出題されやすい内容なので、しっかり押さえておきましょう。
1. ネットワークの基本概念
1-1. LANとWAN
ネットワークは規模や範囲で大きく分けると、LAN(Local Area Network)とWAN(Wide Area Network)に分類されます。
- LAN: オフィスや家庭、学内など、比較的狭い範囲のネットワーク。EthernetやWi-Fiを用いて構築される。
- WAN: 地理的に離れた拠点間を接続する広域ネットワーク。専用線やVPN、MPLSなどの仕組みを使って構成される。
企業では、各拠点のLANをWANで繋いで全社的なネットワークを形成するケースが多く、クラウドサービスへの接続やインターネット利用も合わせて検討されます。試験問題としては、LAN/WANの違いを問う初歩的な設問や、VPN技術などのセキュリティに関連した問いが出やすいです。
1-2. トポロジ(ネットワーク形態)
LANを構築する上での物理的・論理的な接続形態をトポロジと呼びます。代表的なものは次のとおりです。
- バス型: 1本のケーブルに複数の端末が連なる形。近年はあまり使われない。
- スター型: スイッチ(ハブ)を中心に複数の端末を放射状に接続。現在のLANで主流。
- リング型: 端末同士がリング状に接続される。トークンを回して通信制御するなど、一部のネットワークで採用。
- メッシュ型: 各端末(またはルータ)が相互に接続され、耐障害性が高い。無線LANのメッシュ構成などで利用される。
基本情報技術者試験では、物理・論理トポロジの概念やスター型が主流である理由などを問われる可能性があります。スター型は配線管理が容易で障害発生時の影響範囲が小さいため多くの企業LANで採用されている、といった特徴を覚えておきましょう。
2. OSI参照モデルとTCP/IPモデル
2-1. OSI参照モデル
OSI参照モデルは、国際標準化機構(ISO)が制定したネットワーク設計のための概念モデルで、通信を7つの階層(レイヤ)に分割して捉えます。各層の役割は以下の通りです。
- 物理層(Physical): ケーブルや電気信号の伝送方式を定義
- データリンク層(Data Link): 同一ネットワーク内でのフレーム伝送、MACアドレスによる識別
- ネットワーク層(Network): 異なるネットワーク間を結ぶルーティング、IPアドレスによる識別
- トランスポート層(Transport): エンドツーエンドの信頼性確保、TCP/UDPなどを使用
- セッション層(Session): 通信セッションの確立、管理
- プレゼンテーション層(Presentation): データ形式の変換、暗号化・復号化など
- アプリケーション層(Application): アプリケーションに近い通信サービス(HTTP、FTP、SMTPなど)
OSI参照モデルは実装というより、概念的なガイドラインとして使われます。試験では「第◯層での役割」や「OSIモデルと実際のプロトコル対応」などが頻出です。
2-2. TCP/IPモデル
TCP/IPモデルは、インターネットで実際に使用されているプロトコル群を基にした4階層(または5階層)構造のモデルです。
- アプリケーション層: HTTP、FTP、SMTP、DNSなど
- トランスポート層: TCP、UDP
- インターネット層: IP、ICMP、ARPなど
- ネットワークインターフェース層: EthernetやPPPなどの物理・データリンク層部分
実際の通信はこのTCP/IPモデルをベースに行われ、OSI参照モデルと対比して学ぶのが一般的です。TCPは信頼性の高いコネクション型通信を、UDPは軽量で高速なコネクションレス通信を実現します。
基本情報技術者試験では、TCP/UDPの違いや、IPパケットの役割、ARPがMACアドレス解決をする仕組みなどについて問われることが多いです。ICMP(pingコマンドなどで使用)やDNS(名前解決)も要チェックワードといえます。
3. ネットワーク機器の役割
ネットワークを構成する上で、さまざまな機器が使われます。基本情報技術者試験で特に重要度が高いのはルータやスイッチ、ブリッジ、リピータなどです。それぞれがどのOSI層を担当し、どんな役割を持つのかを理解しておきましょう。
3-1. リピータ、ブリッジ、スイッチ、ルータの特徴
- リピータ: 物理層(OSI第1層)の機器。電気信号を増幅・再生するだけで、データの中身は一切見ない。
- ブリッジ: データリンク層(OSI第2層)で働き、MACアドレスをもとに同一ネットワーク内のセグメント間を中継する。
- スイッチ: ブリッジの多ポート版ともいえる機器。ポートごとにMACアドレステーブルを持ち、高速にフレームを転送する。現在のLAN環境ではスイッチが主流。
- ルータ: ネットワーク層(OSI第3層)の機器。IPアドレスを見て、異なるネットワーク同士を中継(ルーティング)する。家庭用ブロードバンドルータや企業の拠点間を繋ぐルータなど、多種多様な形態がある。
試験でよく問われるのは、「ブリッジやスイッチはMACアドレスをみる」「ルータはIPアドレスをみる」といった点です。また、L3スイッチ(第3層スイッチ)など、ルーティング機能を備えたスイッチも実務では登場しますが、基本的にはスイッチは第2層、ルータは第3層を担当という理解でOKです。
3-2. アクセスポイント、ゲートウェイ
- アクセスポイント(AP): 無線LAN(Wi-Fi)において、無線クライアントと有線ネットワークを繋ぐポイントとなる機器。家庭用無線ルータはAP機能を内蔵していることが多い。
- ゲートウェイ: 異なるネットワークやプロトコルを繋ぐための機能や機器の総称。ルータやプロキシサーバなどを含む場合もある。例えば、LANとインターネットを結ぶルータを「デフォルトゲートウェイ」と呼ぶことが多い。
ゲートウェイという用語は広義・狭義で使われるため、試験問題でも「ネットワーク間接続を実現する仕組み」といった表現で出題されることがあります。要旨としては「異なる世界を繋ぐ」というイメージを持っておくとよいでしょう。
4. IPアドレスとサブネット
4-1. IPv4アドレスの仕組み
インターネットでホストを識別するために用いられるのがIPアドレスです。IPv4は32ビット(2進数32桁)のアドレス空間を持ち、「192.168.0.1」のように4つの10進数で表されます。
IPv4アドレスはネットワーク部とホスト部に分割され、サブネットマスクによって長さが決まります。例として「255.255.255.0」というサブネットマスクは/24と表記され、先頭24ビットがネットワーク部、それ以降の8ビットがホスト部です。
試験では以下のような観点で問われやすいです。
- サブネットマスクの意味(ネットワーク部とホスト部の区切り)
- ネットワークアドレス、ブロードキャストアドレスの計算
- クラスA/B/CとCIDR(Classless Inter-Domain Routing)の考え方
4-2. IPv6アドレス
IPv6は128ビット(16バイト)のアドレス空間を持ち、2001:db8::/32のような16進数表記を採用します。IPv4の枯渇問題を解決するために設計されており、IPsecやアドレス自動設定などの機能が標準化されています。
- 表記簡略化: IPv6アドレスは「::」を使って連続する0を省略可能。
- リンクローカルアドレス: 同一リンク(ネットワークセグメント)内でのみ有効なアドレス。fe80::/10をプレフィックスとして持つ。
- グローバルユニキャストアドレス: インターネット上で一意に割り当てられるIPv6アドレス。2000::/3あたりを使用するケースが多い。
IPv6はまだ完全には普及しきっていませんが、今後ますます重要になる技術です。基本情報技術者試験では、IPv4との違いや省略表記など基礎的な部分が主に問われます。
5. ネットワーク関連の主要プロトコル
5-1. アプリケーション層プロトコル
- HTTP: Webページのやり取りに用いられる。HTTPSはTLS/SSLを使って暗号化。
- FTP: ファイル転送プロトコル。FTPサーバとクライアント間でデータをアップロード・ダウンロードする。
- SMTP: 電子メールの送信に用いられる。POPやIMAPはメール受信プロトコル。
- DNS: ホスト名(例: www.example.com)をIPアドレスに変換するしくみ。
アプリケーション層プロトコルは、実際にユーザが使うサービスに直結します。試験問題では、メール送信に使うのはSMTP、名前解決に使うのはDNSなど、プロトコルと用途を紐づけて覚えておく必要があります。
5-2. トランスポート層プロトコル:TCPとUDP
TCP(Transmission Control Protocol)はコネクション型の通信であり、データの再送や順序制御などを行うため高い信頼性を提供します。UDP(User Datagram Protocol)はコネクションレス型であり、確認応答や再送などを行わないため軽量かつ高速です。
- TCPの特徴: コネクション確立(3ウェイハンドシェイク)、フロー制御、輻輳制御、再送制御。
- UDPの特徴: 低オーバーヘッド、リアルタイム性が必要なストリーミングやVoIPでよく使われる。
基本情報技術者試験では、「Webブラウザの通信はTCPを使う」「動画配信やDNSクエリはUDPを使う」など、代表的なアプリケーションとの紐付けを出題することが多いです。また、3ウェイハンドシェイクの手順を問う問題も定番です。
6. ネットワークセキュリティの触りだけ
今回はネットワークの基礎にフォーカスしているため、セキュリティ分野の詳細はまた別の機会に取り上げますが、基本情報技術者試験ではネットワークセキュリティも非常に重要なテーマです。ファイアウォール、VPN、暗号プロトコル(TLS/SSLなど)については、ネットワークの応用として把握しておく必要があります。
特に、ファイアウォールのパケットフィルタリングやDMZ(DeMilitarized Zone)の考え方、VPNで用いられるIPsecやSSL-VPNなどは午前問題・午後問題どちらにも登場しやすいため、今のうちに用語を確認しておきましょう。
まとめ:ネットワーク分野攻略のポイント
- まずはOSI参照モデルやTCP/IPモデルを理解し、各層でどのような役割やプロトコルが存在するかを整理する。
- LANとWANの違い、スター型などのトポロジ、ルータ・スイッチといった機器の役割を押さえる。
- IPv4/IPv6のアドレッシングやサブネットマスクの計算問題に慣れておく。ネットワークアドレスやブロードキャストアドレスの算出は頻出。
- TCPとUDPの違いや、代表的なアプリケーション層プロトコル(HTTP、SMTP、DNSなど)の用途をしっかり覚える。
ネットワークはITシステムの基盤であり、試験でも知識の広さと理解度を測る出題が多数行われます。ひとつひとつの仕組みやプロトコルの名前を暗記するのではなく、「なぜその技術が必要なのか、どんな特性があるのか」まで掘り下げると、午後試験の問題にも柔軟に対応できるようになるでしょう。
次回は、ネットワーク関連と同様に頻出のデータベース基礎に進む予定です。データベースの設計やSQLの基本を学んで、さらなる得点源を確保していきましょう!
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