【基本情報技術者試験】第10回:経営戦略とITの関係を総まとめ!3C・SWOT分析からIT戦略立案、ビジネスモデルまで徹底解説
前回(第9回)はプロジェクトマネジメントについて解説し、ウォーターフォールモデルやアジャイル開発、WBS、リスク管理などを学習しました。今回は同じマネジメント・ストラテジ系の続きとして、経営戦略とビジネスとITの関係に焦点を当てます。情報処理技術者試験では、ITエンジニアであっても企業経営やビジネス戦略の全体像を理解しているかが問われるため、非常に重要なトピックとなります。
この記事では、3C分析やSWOT分析などの代表的な経営分析手法、IT戦略立案やビジネスモデルの構築、DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念など、試験で頻出となるテーマを整理していきます。企業活動と情報システムをどのように結び付けているのか、その理解が求められますので、しっかり押さえていきましょう。
1. 経営戦略とIT活用の重要性
企業が競争力を高めるためには、経営環境を分析し、明確な経営戦略を策定することが不可欠です。ITを活用したビジネス改革は、単なる業務の効率化だけでなく、新たなサービス創出や市場開拓をも可能にします。「ビジネス戦略とIT戦略の連携」が今や企業の成否を左右するといっても過言ではありません。
- 競合他社に打ち勝つための差別化施策
- コストリーダーシップを目指すためのITによる効率化
- 新規事業やサービス創出におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用
基本情報技術者試験では、これらの要素を踏まえた上で、IT人材として経営にどのように寄与できるかという観点が問われます。具体的には、経営分析手法やIT戦略策定プロセスなどの知識が出題されることが多いです。
2. 経営環境分析の代表手法:3C分析・SWOT分析
2-1. 3C分析
3C分析は、以下の3つの要素について自社を取り巻く環境を整理するフレームワークです。
- Customer(顧客): ターゲットとなる市場や顧客のニーズ、市場規模、購買行動などを分析
- Company(自社): 自社の強み・弱み、経営資源、技術力、ブランドなどを評価
- Competitor(競合): 競合企業の戦略、製品特性、市場シェアなどを調査し比較
IT戦略の立案でも、この3C分析から得た知見をもとに「どの顧客層に、どんな技術・システムを提供して差別化するか」を検討することが多いです。試験では、3Cそれぞれの視点でどんな項目を分析するかを把握しておきましょう。
2-2. SWOT分析
SWOT分析は、事業や製品を取り巻く環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つに整理するフレームワークです。
- Strength(強み): 自社の優位性やコアコンピタンス
- Weakness(弱み): 他社より劣っている点や組織上の課題
- Opportunity(機会): 新市場や技術革新など、外部環境の追い風
- Threat(脅威): 競合の台頭や顧客ニーズの変化、規制強化など、外部環境の逆風
SWOT分析では、内部要因(S/W)と外部要因(O/T)を明確に区別した上で、SO戦略やWT戦略などのマトリックスを活用して、具体的な戦略立案へ結びつけます。基本情報技術者試験では、「自社の強みを活かしてどの機会をつかむのか」といった具体的思考を求める問題が出ることがあります。
3. IT戦略立案と情報システム企画
3-1. IT戦略の位置づけ
企業の経営戦略が策定されたら、それを支える形でIT戦略を立てるのが通例です。IT戦略とは「どんな情報システムやインフラを整備することで、経営目標を達成するか」を示す指針です。
- 経営ビジョン・目標: 売上増、コスト削減、新市場開拓など
- IT活用の方向性: デジタルマーケティング、基幹システム刷新、IoT、AI活用など
- 投資・リソース配分: 予算はどれくらいか、人的資源はどのように確保するか
試験問題では、経営戦略と整合性が取れたIT戦略を構築できるか、という観点が問われやすいです。また、ITガバナンスやIT投資評価(ROI/IRRなど)も関連テーマとして出題されます。
3-2. 情報システム化企画プロセス
情報システム導入の企画段階では、以下のようなプロセスを辿ることが多いです。
- 現状調査: 現行業務・システムを可視化し、課題を抽出
- 要件定義(ビジネス要件定義): 経営戦略や業務ニーズをふまえ、システムに求める機能・性能などを大まかに設定
- システム化方式の検討: 新規開発かパッケージ導入か、オンプレミスかクラウドか、アウトソーシングの可否など
- 効果と投資対効果の見積り: システム化により得られるメリットとコストを試算し、ROI(投資利益率)などで評価
- プロジェクト計画立案: スケジュールや体制、ベンダー選定方針などをまとめて企画書を作成
基本情報技術者試験では、これらの流れを俯瞰して「どの段階でどんな作業を行うか」を理解しておく必要があります。特に、ビジネス要件定義→システム化要件定義→業務要件定義というプロセスを混同しないよう注意しましょう。
4. ビジネスモデルと情報システムの連携
4-1. ビジネスモデルの種類
企業が収益を上げる仕組み(ビジネスモデル)は多種多様です。基本情報技術者試験では、以下のような代表的ビジネスモデルや、そのITによる実装形態がよく出題されます。
- サブスクリプション型: 定額課金でサービスを継続提供する(例:SaaS、音楽ストリーミングなど)
- プラットフォーム型: 企業や個人を結ぶ場を提供し、マッチングや手数料で収益を得る(例:ECサイト、シェアリングサービス)
- フリーミアム型: 基本機能を無料で提供し、高度な機能や追加サービスで課金(例:オンラインゲーム、クラウドサービス)
- アフィリエイト型: ユーザ集客力を高め、広告や紹介料で収益を得る
試験では、どのようなビジネスモデルでITが活用されているかや、「ECサイトを運営する場合に必要となる機能やシステムは何か」といった観点が問われることがあります。
4-2. デジタルトランスフォーメーション(DX)
DX(Digital Transformation)とは、ITやデジタル技術を駆使して企業のビジネスモデルや組織文化を変革し、新たな価値を創出することを指します。具体例として、
- データ分析を活用した顧客行動の予測、パーソナライズされたサービス提供
- IoTを活用したサプライチェーンや製造ラインのリアルタイム最適化
- クラウド基盤やAIを用いたスピーディなサービス開発
試験では、「DXによって企業は何を目指しているか」「どのようなIT基盤が必要か」などが問われることがあります。DXは単なるシステム導入ではなく、ビジネスそのものの革新を意図している点がポイントです。
5. ITガバナンスとITIL、COBITの基礎
企業規模が大きくなると、複数の情報システムやプロジェクトを統括し、全社的に整合性をとるための仕組みが必要になります。これを一般にITガバナンスと呼びます。
5-1. ITガバナンスの概要
- 方針とルール: 情報システムへの投資判断、セキュリティ基準、標準化などを定める
- 組織体制: CIO(Chief Information Officer)やCDO(Chief Digital Officer)などを設置し、IT部門を戦略的に位置付ける
- 監査と評価: 監査部門や外部機関が、システム運用やセキュリティの実態を評価し改善を促す
基本情報技術者試験では、「ITガバナンスが弱いとどうなるか」「意思決定プロセスを標準化する目的」などが問われます。さらに、以下のようなベストプラクティスを言及することもあります。
5-2. ITILとCOBIT
- ITIL(IT Infrastructure Library): ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめたフレームワーク。インシデント管理、問題管理、変更管理などのプロセスを体系化。
- COBIT(Control Objectives for Information and Related Technology): ITガバナンスと管理指標を提供するフレームワーク。情報システムをどのように統制・監査するかをガイドラインとして示す。
試験では、「ITILはサービス運用のベストプラクティス」「COBITはITガバナンス全般の統制フレームワーク」という大まかな位置づけを理解しておくとよいでしょう。
6. まとめと試験対策のポイント
- 経営戦略とITの連携: 企業が競争優位を確立するためにITをどのように活かすか、経営戦略との整合性が重要。
- 3C分析・SWOT分析: 外部環境(顧客・競合・市場機会・脅威)と内部環境(自社の強み・弱み)を整理し、戦略立案の基礎とする。
- IT戦略立案: 経営課題を解決するための情報システム企画プロセスを理解。投資対効果(ROI等)や効果測定も重要。
- ビジネスモデル: サブスク、プラットフォーム、フリーミアムなどIT時代に合った収益モデルと、DXによる変革を把握する。
- ITガバナンスとフレームワーク: ITILはサービス運用、COBITはガバナンス全般。IT基盤を全社的に管理する仕組みを理解。
基本情報技術者試験では、経営戦略やビジネスモデルそのものを深く問われるわけではありませんが、ITエンジニアが経営視点を踏まえてシステムを提案・運用するという観点から、一定レベルの知識を求められます。過去問やテキストでキーワードとその意味を確実に押さえておきましょう。
次回(第11回)は、法務や知的財産権、標準化団体といったトピックを扱う予定です。情報処理安全確保支援士試験などでも重視される法的知識を一緒に確認していきますので、ぜひご期待ください!
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