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絞り値(F値)を上手に使って、思い通りの写真を撮ろう!
本記事では、絞り値(F値)を実際の写真や図を使いながら解説し、F値によって写り方がこんなに変わる!ということを知っていただくための記事です。
一眼レフカメラを持っている人、あるいは一眼レフの購入を考えた人ならば「F値」という言葉を聞いたことがあるかと思います。ここでは「F値を変えると写真はどう変わるの?」「なぜF値が変わるとボケ味が変わるの?」という質問に答えていきます。
F値 基本事項
F値というのは、シャッタースピードやiso感度と並んで写真の明るさ(露出)を決定する大切な要素の一つです。
シャッタースピードやiso感度の説明はこちら
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F値は絞り値という名の通り、「センサーに入る光をどれだけ絞っているか」を表す値になります。身近なものに例えると「瞳孔」に相当します。明るいところに行けば瞳孔が小さくなって目に入る光の量を抑える。暗いところに行けば瞳孔が開いてたくさんの光を取り入れるようになる。人間は明るさに応じて、脳からの指令によって瞳孔の開き具合を制御しています。
カメラではAutoモードにすれば絞り値は自動制御になるのですが、絞り優先、あるいはマニュアルモードにして自分で絞り値を決めることによって、自分の思い通りの写真を撮ることができるようになります。
F値の特徴
明るさと被写界深度
F値をどう変えれば、写真はどう変わるのかを説明します。F値を変えると「明るさ」と「被写界深度」が変わります。
F値を下げると「明るさ」は明るくなり、「被写界深度」は浅くなります。
F値を上げると「明るさ」は暗くなり、「被写界深度」は深くなります。
F値に関する用語
F値は1.4, 2, 2.8, 4, 5.6, 8, 11, 16, 22, 32の順に大きくなっていきます。ここで1.4~2の幅を「1段」と呼びます。F値が√2 = 1.414倍になるたびに1段上がるのです。F値を1段だけ大きい方向に変える(1.4→2など)ことを「1段絞る」といいます。逆に1段だけ小さい方向に変える(8→5.6など)ことを「1段開ける」といいます。カメラマニアの間では、このような言葉がいくらでも使われるので覚えてい置くといいでしょう。
F値と明るさ
開けると明るくなることはわかるんやが、どのくらい明るくなるん?
1段絞ると明るさは半分になります。つまり、F5.6からF8にすると明るさは半分になります。
F値を√2倍すると明るさは1/2倍になると覚えておいてください。
絞りを一段絞ると明るさは1/2になりますから、「F5.6 SS 1/20」でとっていた写真と同じ明るさの写真は「F8 SS 1/10」となります。絞ることでセンサーに入る光の量が半分になったのですから、同じ明るさの写真を撮るには光をセンサーへ取り込む時間を倍にしてあげないといけません。
F値と被写界深度(F値による写真写りの違い)
明るさはわかるんやけど・・・被写界深度が深い、浅いってなんなん?
そうですね。いきなり被写界深度なんて言葉出されても困りますよね。それでは、実際に写真を見て「被写界深度の違い」というのを実感いただきたいと思います。
実際の写真を使ってF値の違いを実感する
被写界深度が深い、浅いというのはピントの合う範囲が広い、狭いに相当します。実際の写真を使って説明します。こちらは、二つの高さ5㎝程度のぬいぐるみ(手前のキャラクターをシナモン、奥のキャラクターをぼんぼんリボンと呼びます。共にサンリオのキャラクターです。)を上から写した写真です。このくらいの位置関係のある二つを手前からF値を変えながら写していきます。ピントは常に手前(シナモンくん)に合っている状態になっています。
まず、F1.8から見てみましょう
F1.8 SS 1/40 iso125(※SSはシャッタースピードを表します。この場合、1/40秒です)
シナモンくんだけハッキリと写って、リボンちゃんはかなりボケていることがわかります。F値が小さければ被写界深度が浅い(ピントの合う範囲が狭い)のでこのようなことが起こります。
浅い被写界深度というのは主人公がハッキリと決まっていて、それを際立たせたいときに使います。例えば、運動会で自分の子どもが活動している様子とか特定の一匹、一本の動植物を写したいときなどは写真の主人公がハッキリと決まっているので、それにだけピントが合っていて、それ以外はボケているのが理想です。
次にF2.8にしました
F2.8 SS 1/40 iso320
さっきよりリボンちゃんがハッキリとしてきたのがわかりますでしょうか?また、F値を上げると写真が暗くなるので、その分だけiso感度を上げています。(手振れの影響を除くため、SSは一定としました)
以後、F4.0/F5.6/F8/F11/F16/F22の順に写真を載せていきます。
F4.0 SS 1/40 iso640
F5.6 SS 1/40 iso1250
F8.0 SS 1/40 iso3200
F11.0 SS 1/40 iso6400
F16.0 SS 1/40 iso12800
F22.0 SS 1/40 iso25600
大体F8.0くらいからハッキリとリボンちゃんが見えてきています。F値が大きいと前の物体も後ろの物体もハッキリと写せるため、主人公が色々なところにいる、あるいは主人公を決めない写真を撮る場合はF値を大きめに設定するといいと思います。前者の具体例は集合写真、後者の代表例は風景です。
さらにF値を上げていくと写真がどんどん暗くなるので、同じ明るさの写真を作るにはiso感度を上げていかなければいけません。F22.0くらいではiso感度最高にしているのでかなりザラついた写真になっています。
理論的にF値の違いを実感する
どうして、F値が変わると被写界深度が変わるん?
確かに。F値を変えれば明るさが変わるというのは話が分かりやすいですが、被写界深度が変わるのはなぜでしょうか?
アタシも詳しくはようわからんくて、なんとなくやっとる。
う~ん、これはな、レンズを通したときの光の道筋が関係しそうやな。光学の観点から説明できるかもしれないたいね。
ねぇねぇ、ストーク、説明してよ!
わかった!おもろそうやから調べてみるわ~!
錯乱円と許容錯乱円、レンズの公式
今回、シナモンくんとリボンちゃんの撮影に使用したレンズは「AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G」です。このレンズは焦点距離35㎜、最短撮影距離0.3mです。ニコン公式(http://www.nikon-image.com/enjoy/phototech/manual/19/01.html)によると「レンズの焦点距離とは、ピントを合わせたときのレンズから撮像素子までの距離」だそうです。
ここで、シナモンにギリギリまで近づいてピントを合わせて撮影をした場合、シナモン、レンズ、撮像素子の位置関係と光の道筋は以下のようになります。
※サンリオの設定によると、シナモンくんは子犬らしいので、シナモンくんを犬で表してみました。また、レンズの後ろにある棒は絞り、奥にある棒は撮像素子(イメージセンサー、以下センサーといいます)です。
シナモンくんから出た光(正確に言えば、自然光や部屋の照明がシナモンくんに当たって反射した光)はレンズに集められて、センサーに結像します。
右のほうにある赤い丸と青い丸はなんなん?
赤い丸は許容錯乱円、青い丸は錯乱円。
???
許容錯乱円、錯乱円というナゾの言葉が出てきました。
まず錯乱円について説明します。上の図のようにピントが合っていれば、イメージセンサー上で光の道筋は点とみなされるのですが、ピントが合わなければ円としてみなされます。ピントが合わなければ合わないほど、錯乱円は大きくなっていきます。
下図を見てください。レンズを開放にしてシナモンくんにピントを合わせて撮影したとき、同時にリボンちゃんからは緑色で示す、光の道筋ができています。リボンちゃんにはピントが合っていないので、イメージセンサーに結像したとき、円としてみなされます。これが錯乱円(青い丸)です。
31.9mmいうのはレンズの公式を使って出した数字たい。
物体からレンズまでの距離をA、レンズから撮像素子までの距離をB、焦点距離をFとしたら、レンズの公式は
1/A + 1/B = 1/F
です。A=365 mm、B=35mmとすれば、F=31.9mmと出てきます。
次に許容錯乱円とは、イメージセンサの中でピンボケとみなされない範囲のことを言います。写真を撮ったとき、レンズを通じて大小異なる様々な錯乱円がイメージセンサーにやってきます。このとき、
「この大きさ以下の錯乱円では点とみなす」
という大きさの円があります。それが許容錯乱円であり、図では赤色の丸で表現されています。錯乱円が許容錯乱円以下の大きさのとき「ピントが合っている」というのです。
みんながよう言う、ピントが合う、合わないということを錯乱円と許容錯乱円という言葉使って表現するとな、
イメージセンサーに来た錯乱円が許容錯乱円より小さいときにピントが合って、大きいときにボケとる
と言えるたい。許容錯乱円に対する錯乱円の相対的な大きさによってボケ具合は変わってくることがわかったんよ。
この写真を撮るときの光の道筋、錯乱円、許容錯乱円、ピントの状況(合っているか合っていないか)は
以下の概略図で表すことができます。
F値を変えたときの光の道筋の変化
まだF値が変わると被写界深度が変わる説明ができてないような・・・
せやな。じゃあ、さっきと同じ図で考えてみような。F値を大きくすれば、レンズの後ろにある棒が大きなって、光の道筋が変わるたい。
同じように、ぼんぼんリボンの光の道筋を描いてみるぞ
あっ!錯乱円がさっきより小さいなぁ~!
F値が大きいと、光の道筋が制限されて、錯乱円が小さくなります。すなわち、F値を大きくするとボケにくくなるのです。
シナモンくんにピントを合わせたときの、ぼんぼんリボンちゃんの光の道筋を、F値が小さいとき(実線)と大きいとき(点線)の2パターンで表してみました。F値が大きいと錯乱円が小さくなり、ピントが合うようになるんですね。
まとめ
本記事ではF値について、特徴を説明しました。F値を変えると「明るさ」と「被写界深度」が変わるという現象と、その現象を光学の観点から説明しました。
F値を下げると「明るさ」は明るくなり、「被写界深度」は浅くなります。
F値を上げると「明るさ」は暗くなり、「被写界深度」は深くなります。
被写界深度が浅いというのは、ピントの合う範囲が狭いということを意味します。したがって、主人公がハッキリしているような写真(ポートレート、子ども、動植物)を写すときはF値を小さくして主人公を際立たせると良い写真が撮れます。逆に主人公が色々なところにいる場合(集合写真)、主人公が定まらない写真(風景)などはF値を大きくして隅から隅までしっかりとピントを合わせると良いでしょう。ちなみにですが、新幹線撮影の際は、新幹線が非常に長いので、F値を大きくして撮っています。
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