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スポンサーリンク精留塔のモデル図が還流をわかりづらくしている
精留塔に関する以下のシリーズを作るにあたり、
「蒸留塔 還流 目的」「蒸留 還流 理由」というワードが良く検索されていることを知りました。実際に「蒸留塔 還流 目的」で検索をかけてみると
「還流の目的がいまいちわかりません」
という旨の内容の知恵袋がヒットしました。
確かに、教科書を開いても「精留塔の分離効率を向上させるために、還流を行う」といった内容が書かれておりますが、正直言ってこの記述だけでは納得できません。
さらに、多くの教科書には以下に示すようなモデル図が使われています。
・このモデル図が還流の概念を余計にわかりづらくしているのではないか、
・還流を行うと分離効率が向上するその理由をどのように考えればいいのかまとめておきたい、
と思い、本ページを作成することにしました。
還流のない蒸留塔の留出部はただのフラッシュ蒸留塔である
ねぇ、ストーク。精留塔での還流の目的ってなんなの?化学工学詳しい人って、還流比を上げると、分離効率があがるよ。って言って、還流比と所要段数の関係のグラフを見せてくるじゃない?
そもそもワタシ、還流したら段数少なくて済む理由がイマイチピンとこなくて・・・。
そもそもワタシ、還流したら段数少なくて済む理由がイマイチピンとこなくて・・・。
う~ん・・・せやなぁ。自然現象とか、工場での操作の意味がよう分らんかったら、
・その操作をやらなければどうなるか
・その操作を目一杯やったらどうなるか
を考えてみるとええよな。
・その操作をやらなければどうなるか
・その操作を目一杯やったらどうなるか
を考えてみるとええよな。
そっか。数学でもよくゼロリミット、マイナス無限大リミットと無限大リミットをとる作業をするもんね。今回の場合は、還流しないとどうなるか、全還流したらどうなるか・・・?
せや。例えば全く還流せんかったとき。よ~く考えてみるたい。
①原料を供給し続ける
②塔頂では、蒸気が溜まり、塔底では液が溜まる
③上記の状態をずっと維持し続ける
①原料を供給し続ける
②塔頂では、蒸気が溜まり、塔底では液が溜まる
③上記の状態をずっと維持し続ける
②はどういうこと?
難しく考えんでええよ。ただ単に細長い容器に対して、液体をぶっこんだら、下に液が落ちて上に蒸気が上がってくるやろ?
うん・・・。あ、還流を一切しなかったら、原料供給段より上部ってカラッカラ・・・。
せやで。カラッカラ。蒸気だけになっとると。ここでおかしなことが起こる。原料供給段よりも上の段では、気液平衡が起こっているというモデルのはずなのに、還流せんと液がなくなってしまったと。
これってただのフラッシュ蒸留なんじゃ・・・。
そこ!そこや!気づいてほしかったんは!!
原料供給段より上はカラッカラで下は水たまりみたいになってて、気液の接触が下でしか行われていないから、留出部は実質フラッシュ蒸留みたいな扱いになってしまうのね。
多くの教科書にある、こんな感じの図がアタマんなかで先行していると、還流ってなんのためにあるの?って思うてもおかしくないかもな。この図からは、還流なしのときに「原料供給段より上がカラッカラになっていること」を想像し難いからな。
それからオマエ、せっかくこのプログラムを書いたんやからR=0にして実行してみたらええたい。
えっと・・・。
R = 0で原料供給段と理論段数の数を増やしてみればええとね。
あっ、いくら段数増やしても留分の濃度が変わんないんだ・・・。無意味になっちゃうんだ・・・。
これでいかに還流が大事かわかるやろ?
還流比を上げると分離効率が上がる理由
そこで、最上段から出る蒸気を凝縮して得た液を全部留分にしないで、一部だけ塔内に戻す、いわゆる還流という操作を行う。これをやると、初めて上の図のように原料供給段より上にも液があって、気液間の物質移動が行われている状態になる。
還流する液体というのはどんな性質・・・というか特徴があると思う?
どんな特徴・・・???
純度が高い。
純度が高いな。精留の目的としてはなるべく低沸点成分濃度が高い(=純度が高い)液を得ることなわけたい。
それを念頭に置いてだな、純度の高い液を上から垂らす言うことは何をしているか?ということを考えてみる。
それを念頭に置いてだな、純度の高い液を上から垂らす言うことは何をしているか?ということを考えてみる。
下から上がってきた蒸気が原料供給段よりも上で気液接触をする。その時、液体の純度が高ければ高いほど、純度の高い蒸気を得られる・・・。
そっか。純度の高い液を精留塔に戻すことによって留出部の純度が上がっていくんだ。
そういうこと、せやから、還流比を上げれば上げるほど、純度の高い液を大量に塔の中へ戻すわけやから、分離効率が上がっていくというわけたい。
それから還流比は上げれば上げるほどええわけやなくて、Rの変化に対して留分の純度の上がり方がだんだん鈍くなっていくから、ちょうどええところに決めるわけやな。
あ・・・ホントだ・・。
シミュレーションと現実の現象のイメージがだいぶ近づいた気がする。ありがとう!
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