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ルビーはダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、7月の誕生石としても有名な美しい赤い宝石です。
今回は「ルビーがなぜ赤色なのか」、コランダム型の構造や、クロム原子の電子配置が関係していることを見ていきます。
ルビーはコランダム(鋼玉)と呼ばれる鉱物の変種です。
コランダムはアルミナ(酸化アルミニウム Al2O3)を主成分としており、そこにクロムなどの不純物が入ることで色がつきます。
コランダムは鉱物名、アルミナは物質名、そしてコランダム型はその結晶構造の名前です。
アルミナにはスピネル型とコランダム型があり、ルビーはコランダム型アルミナを基礎としています。
コランダム型の構造では、3つの酸素原子が作る窪みにアルミニウム原子が位置し、6配位八面体構造をとっています。
このような八面体構造がコランダムの基礎となります。
ルビーの中には、酸素に囲まれたクロム原子が存在し、これがルビーの赤色の正体です。
ただし、アルミニウムが中心の場合は色がつきません。
ではなぜ、クロムだと赤くなるのでしょうか?
それは、原子の「電子状態」の違いによるものです。
アルミニウムイオン(Al3+)には3d軌道に電子がありませんが、クロムイオン(Cr3+)には3d軌道に電子が存在します。
この3d軌道に電子がいるかいないかが発色の鍵です。
本来、3d軌道はエネルギーが等しい5つの軌道(縮退状態)を持っています。
しかし、周りに配位子(今回は酸素原子)が来ることで、3d軌道のエネルギーが二種類に分かれます。
これを「縮退の解除」といい、低エネルギー側t2gと高エネルギー側egの2つに分裂します。
t2gの軌道からegの軌道へ電子が移るためには、特定のエネルギーが必要です。このエネルギーは青~緑色の光に対応します。そのため、青~緑色の光が吸収され、残った光が赤色として私たちの目に届くのです。
結果、白色光(いろいろな色が混ざった光)から青~緑を奪い去られた「残り」が赤色となり、ルビーの美しい赤い輝きが生まれます。
ルビーの赤色は、コランダム型アルミナ中に含まれるクロム原子の3d軌道分裂によって、青~緑色の光が吸収され、赤色の光だけが残るためです。
物質が吸収しない可視光線の光が私たちに見える色となる――これは葉っぱが緑色になる原理と同じです。