結論
責任と権限がずれている組織では、 結果だけ背負わされる人と、 決める力だけ持っている人が分かれます。 この状態になると、現場は動きにくくなり、上は状況を誤解しやすくなります。
たとえば、納期や品質の責任は持たされているのに、 人員調整も優先順位変更も決められない。 あるいは、説明責任はあるのに、必要な情報へアクセスできない。 こうしたズレがあると、責任はあるのに動かせない、という苦しい仕事が増えていきます。
だから組織で大事なのは、 「責任を明確にすること」だけでは足りません。 その責任を果たすために、何を決められるのかまでセットで設計する必要があります。 責任と権限がそろって初めて、役割は機能します。
相談:任されているのに、決められない
現場の担当者や中間管理職が、
「この件は自分の責任です」と言いながら、
実際には何も決められないことがあります。
予算は触れない。人も動かせない。優先順位も変えられない。
それでも結果だけは求められる。
この状態は、本人の力量より前に、組織の設計に無理があります。
責任者って言われとるのに、
実際は何も決められん立場ってあるたいね。
あれ、かなりしんどか。
あるのよ。
責任だけ渡して、決める力は上に残したまま、っていう形ね。
それ、かなり壊れやすいの。
ばってん、
権限ば広げすぎると勝手に動かれて困ることもあるやろ?
そう。
だから何でも自由にする話じゃないのよ。
責任を持つ人が、責任を果たすために必要な範囲だけ決められるようにするの。
あー。
責任と権限は、同じ大きさに近づけんと回らんわけたいね。
そういうこと。
ハンドルを渡さないまま「ちゃんと運転してね」って言ってるようなものなのよ。
解説:責任だけ重く、権限が軽いと何が起きるのか
責任と権限のズレは、表面上は見えにくい問題です。
会議では担当が決まっているように見えるし、役職名もある。
でも実際には、その人が動かせる範囲が狭すぎて、責任だけが浮いた状態になっていることがあります。
1)責任があるのに動かせないと、現場は受け身になる
いちばん分かりやすい問題は、責任者が動けないことです。
納期を守れと言われているのに、優先順位を変えられない。
品質を守れと言われているのに、レビュー体制を決められない。
顧客対応を任されているのに、例外判断は全部上に確認しないといけない。
こうなると、担当者は責任を引き受けるより、
「確認待ち」に入る方が安全になります。
結果として、責任を持っている人ほど、自分で動けなくなるという逆転が起きます。
2)上は“任せたつもり”、下は“持たされた感覚”になる
権限が伴わないまま責任だけ渡されると、
上の人は「任せた」と思い、下の人は「背負わされた」と感じます。
この認識差はかなり大きいです。
上から見ると、担当を決めているので筋が通っているように見えます。
でも下から見ると、実際には決める鍵を持っていないので、
仕事を持っているというより、結果の窓口にされているだけに感じやすいのです。
任せるって、名前をつけることじゃないのよ。
決められる範囲まで渡って、初めて任せたことになるの。
たしかに。
名前だけ責任者でも、鍵がなければ部屋は開けられんたいね。
3)ズレは、隠れた無責任を増やす
責任と権限がずれている組織では、
一見すると責任者が明確なようでいて、実は無責任な空間が増えます。
なぜなら、決める側は結果を直接背負わず、
背負う側は決められないからです。
その結果、
「自分は決裁しただけ」
「自分は指示に従っただけ」
「自分は担当だけど決めていない」
という言い方が増えます。
これは誰かが悪いというより、責任と権限の線がずれていることで生まれる構造的な逃げ道です。
4)組織が壊れるのは、疲弊が偏るから
このズレが続くと、疲れる人が偏ります。
結果を説明し続ける人、板挟みになる人、現場で謝る人に負荷が集まりやすいです。
一方で、決める権限を持つ側は細部の痛みを感じにくく、
現場で何が詰まっているかを見失いやすくなります。
こうして、しんどい人ほど動けず、決められる人ほど現実から遠くなる。
それが組織の分断につながります。
1) 責任者なのに、優先順位や人の動かし方を決められない
2) 現場が毎回、例外対応を上へ確認しないと進めない
3) 結果の説明は担当がするのに、重要判断は別の人がしている
4) 上は「任せている」と言い、下は「持たされている」と感じている
テンプレ:責任と権限のズレを見る4つの問い
責任と権限がずれていそうなときは、
「誰が担当か」だけでなく、「その人は何を決められるか」を見ると整理しやすくなります。
【責任と権限の4行】
1)この結果に責任を持つのは誰ですか?
2)その人は、何を決められますか?
3)決められないことは、誰がどの速さで決めますか?
4)説明責任と判断権限は、同じ線の上にありますか?
例:
「納期責任を持つ人は、優先順位を変えられるか?」
「品質責任を持つ人は、レビュー体制を調整できるか?」
「現場判断の限界を超えたとき、誰が即断するか?」
これなら、
「責任者ば決めた」で満足せんで済むたいね。
決める力まで見にいける。
そうなのよ。
責任設計って、名前を置くことじゃなくて、
その人が果たせる形を作ることなの。
落とし穴
よくある落とし穴は、
「権限を渡すと暴走するかもしれない」という不安だけで、
ほとんど何も決められない責任者を作ってしまうことです。
それでは、統制が強くなるのではなく、確認待ちが増えるだけです。
逆に、何でも自由に決められるようにすればよいわけでもありません。
大事なのは、責任に見合う範囲の権限を渡すことです。
全権委任かゼロ権限か、ではなく、
どこまで決められ、どこから上げるかをはっきりさせることが必要です。
締め
責任と権限がずれてると、
頑張る人ほど苦しくなるのよ。
背負うのに、動かせないから。
よか整理たい。
責任ば渡すなら、ハンドルも一緒に渡さんといかんね。
そうそう。
進路は決めさせないのに、事故の責任だけ持たせるのは、かなり無茶なのよ。