結論
合意形成は、空気を読んで何となくうまくやることではありません。
立場を理解し、問題を共有し、選択肢を出し、合意点を作るという、かなりはっきりした技術です。
この順番を飛ばすと、会話はすぐに「正しさの押しつけ」か「気まずさの我慢」になりやすいです。
逆に順番を守ると、感情が強い場面でも、話を少しずつ前に進められます。
つまり合意形成の技術とは、相手に勝つ方法ではなく、
対立を、共同で解く問題へ変換する手順です。
導入:分かっただけでは、まだ足りない
前回、シママは「合意形成は説得ではなく、問題の見方を揃えること」だと説明しました。
そして、ファビーの現場感覚とストークの論理を、共通問題へ組み替えてみせました。
でも、ここで終わると「なるほど」で終わってしまいます。
実際の職場では、分かっただけでは足りません。
次に必要なのは、「じゃあ、どうやってやるのか」です。
そこで今回は、シママがストークにコーチングしながら、
合意形成をどう進めるかを実況つきで見ていきます。
合意形成の技術は、4つの段で進める
合意形成の技術は、場当たり的な話術ではありません。
大きく分けると、次の4段で進めると安定します。
① 立場理解
まず、相手がどこに立っていて、何を守ろうとしているかを理解します。
ここで大事なのは、賛成することではなく、相手の地図を把握することです。
② 問題共有
次に、「あなたの問題」「私の問題」を並べるのではなく、
一緒に扱える問題へ組み替えます。
ここができると、会話は対立から共同作業へ変わります。
③ 選択肢提示
問題が共有できたら、いきなり一つの正解を押しつけず、
選択肢を並べます。
選択肢があると、相手は「従う/従わない」ではなく「どれを選ぶか」で考えられます。
④ 合意点形成
最後に、「完全一致」を目指すのではなく、
まずは今この場で一致できる点を作ります。
合意形成は、一発で全部を揃えることより、次に進める足場を作ることが大切です。
なるほどたい。
でも実際の場やと、つい自分の案を先に言いたくなるとよ。
そこをどう抑えるとね。
そこがまさに技術なのよ。
いきなり自分の案を出すと、相手は「もう結論あるんだな」って感じて閉じる。
順番を守るだけで、かなり変わる。
では、この4段を実際の会話でどう使うのか。
シママが横で解説しながら、ストークにやらせてみます。
実況つき実演:シママが横で解説しながら進める
前回と同じく、相手はファビーです。
ファビーは「現場を今日ちゃんと回す」ことを重く見ています。
ストークは「再発しない構造を作る」ことを重く見ています。
ここでシママは、ストークに対して「今どの段か」を示しながら、会話を進めさせます。
読みながら、自分ならどこで焦って飛ばしそうかも意識してみてください。
① 立場理解:先に相手の地図を読む
いま①。立場理解。
ストーク、自分の案はまだ言わないで。
まずファビーが何を守ろうとしてるかを、そのまま言葉にしてみて。
ファビーは、今日の現場が崩れんことを一番大事にしとる。
きれいな整理より先に、今ちゃんと回ることを守りたい。
そこが一番重いってことたいね。
うん、そう。
まずそこを分かってもらえると、だいぶ違う。
ここで重要なのは、ストークが反論していないことです。
「でも」も「ただ」も入れていません。
立場理解では、自分の正しさを混ぜない方がうまくいきます。
② 問題共有:二人の問題を、一つの問題へ変える
次、②。問題共有。
ストークの問題だけでも、ファビーの問題だけでもなく、
二人が一緒に解く形に言い換えてみて。
じゃあ問題は、
「今日を止めずに回しながら、同じ苦しさを繰り返さん形をどう作るか」
ってことになるたいね。
うん、その言い方なら乗れる。
「整理するかしないか」じゃなくて、両方どう取るかの話になるね。
ここで初めて、ストークとファビーは同じ土台に立ちます。
合意形成では、この「共通問題を作る」瞬間がかなり重要です。
③ 選択肢提示:正解を一つにしない
ここから③。選択肢提示。
ストーク、一本だけ出すと押しつけに見えやすいから、
まずは二つか三つにしてみて。
なら、案は三つくらいあるたい。
一つ目は、今日は応急で回して、来週まとめて整理する。
二つ目は、今日の中で最低限だけ整理して、残りは後でやる。
三つ目は、今日は止めてでも整理を優先する。
三つ目はちょっときついかな。
でも、一つ目と二つ目なら考えられそう。
選択肢があると、相手は自分の立場を守りながら参加できます。
これが、一方的な提案との大きな違いです。
④ 合意点形成:まずは「今ここ」の一致を作る
はい、最後④。合意点形成。
全部を一気に決めなくていい。
まず今この場で、一致できる点を作ろう。
じゃあ今日は、現場を止めん範囲で最低限の整理だけ入れる。
その上で、来週に残りを整理する時間を確保する。
ここはどうね。
うん、それならいい。
今日が守れて、しかも次に進む形があるなら納得できる。
これで、完全一致ではなくても「次に進める一致」ができました。
合意形成では、ここまで来れば十分強いです。
技術として見る意味:感覚でやらない方が、むしろ優しい
合意形成を「その場の空気で何とかする力」だと思うと、
強い人だけができるものに見えてしまいます。
でも実際には、手順として分けて考えた方が再現しやすく、職場でも使いやすいです。
特に、ストークのように論理で押し切りがちな人にも、
ファビーのように現場感覚で反発しやすい人にも、
手順があると助けになります。
なるほどたい。これ、性格の良さでやるもんやなくて、
手順を守って進める技術なんやね。
そう。だから練習できるし、失敗したらどこを飛ばしたかも見える。
「いま①だったのに案を出したな」とか、ちゃんと振り返れるのよ。
これが、合意形成を技術として扱う強さです。
再現できるものになると、個人のセンスに頼らずに済みます。
締め:合意形成は、順番を守る技術
第3回で押さえたいのは、合意形成にはちゃんと手順がある、ということです。
立場理解、問題共有、選択肢提示、合意点形成。
この順番を守るだけで、会話の壊れ方はかなり変わります。
そして大事なのは、全部を一気に解決しようとしないことです。
まず今ここで一致できる点を作る。
そこから次の一歩を作る。
それが、実務で使える合意形成です。
じゃあ次はいよいよ核心。
合意形成って、ただ優しいだけの話じゃないよね、ってところまで行こうか。
うん。ここまで来ると分かるたい。
合意形成って、気を遣うことやなくて、
状況を動かすための力そのものなんやね。