結論
合意形成とは、相手を言い負かすことでも、無理に納得させることでもありません。
問題の見方を揃えて、共通の土台を作ることです。
説得が「相手を変える」ことに向きやすいのに対して、
合意形成はお互いが見ている問題を言葉にして、同じ地図を持つことに向きます。
だから合意形成では、先に正解を押しつけるより、
相手が何を守ろうとしているか、どこで困っているか、何を怖がっているかを整理する方が先です。
導入:話が壊れたあとに、何をやり直すのか
前回、ストークとファビーは普通に喧嘩しました。
でもシママが見ていたのは、二人の性格ではなく、
見ている問題・立場・ゴールがズレていたことでした。
では、そのズレが見えたあと、次に何をするのか。
ここで必要になるのが「合意形成とは何か」の定義です。
ここを曖昧にしたまま進むと、またすぐに
「どうやって説得するか」「どうやって折れさせるか」の話に戻ってしまいます。
でも、それは合意形成とは少し違います。
説得と合意形成は、似ているようで違う
合意形成という言葉は、日常では「相手をうまく納得させること」のように使われがちです。
でもその理解だと、会話はすぐに苦しくなります。
なぜなら、「納得させる」が中心になると、
どうしても自分の正しさを押し出す方向に傾くからです。
すると、相手の言葉を聞いているようで、実際には反論の準備をしているだけになりやすい。
説得:相手を変える方向に向かいやすい
説得では、「自分の考えの方が正しい」「だから相手に理解してもらう」という流れになりやすいです。
もちろん、場面によっては必要です。
ただし、問題の見方がズレたままだと、説得はだいたい失敗します。
合意形成:問題の見方を揃える
合意形成では、「どちらが勝つか」より先に、
いま何を別々に見ているのかを明らかにします。
つまり、相手を変える前に、会話の土台を整えるのです。
つまり、俺がファビーを「分からせる」ことが合意形成じゃないとね?
そう。そこで「分からせる」って言葉が出る時点で、ちょっと危ないのよ。
合意形成は、相手を押し切る技術じゃない。
じゃあ、どう違うの?
納得してもらうのと、そんなに別物なのかな。
うん、違う。
説得は「相手を変える」に寄りやすい。
合意形成は「問題の見方を揃える」に寄る。
似てるようで、会話の入口が全然違うのよ。
ここで大事なのは、合意形成が「ぬるい話し合い」ではないことです。
むしろ、見方のズレを丁寧に言葉にするぶん、説得より難しいことも多いです。
シママの実演:共通問題を作る
ここから、シママが実際に何をしているかを見ていきます。
ポイントは、どちらかの味方になることではありません。
まずはファビーが守ろうとしているものを言葉にし、
次にストークが見ている論点を整理し、
そのあとで二人に共通する問題を作ります。
① 先に、現場の事情を言語化する
合意形成では、先に現場の重さを言葉にしてあげることがよくあります。
なぜなら、現場側は「軽く見られた」と感じると、それだけで防御的になるからです。
まずファビーの側から言うね。
ファビーが守りたいのは「今日ちゃんと回ること」だよね。
きれいな理屈より先に、目の前の現場が崩れないことが大事。
そう。わたし、そこを分かってほしかった。
今日崩れたら、その後の理屈どころじゃないから。
ここでは、反論しません。
まず「そう見えていたんだね」と、相手の地図を言葉にします。
それだけで、防御はかなり下がります。
② 次に、ストークの論点を整理する
そのうえで、今度はストークの側が何を守ろうとしていたかを言葉にします。
ポイントは「理屈っぽい」で終わらせないことです。
理屈の奥にある意図を翻訳します。
で、ストークが守りたいのは「今日を回すたびに同じ苦しさを繰り返さないこと」なのよね。
目の前の一回じゃなくて、次も崩れないようにしたい。
そうたい。
その場では回っても、毎回同じところで苦しむなら、どこかで整理せんといかんと思っとった。
こうして見ると、二人のどちらも「仕事を楽にしたい」「崩れないようにしたい」と考えています。
ただし、見ている時間軸が違いました。
③ 最後に、共通問題を作る
合意形成で最も重要なのはここです。
ファビーの問題、ストークの問題を並べたままだと、まだ二本立てです。
それを一本に束ねる必要があります。
シママはここで、「今日回ること」と「次も崩れないこと」を対立させず、
両方を満たす共通問題へ変えます。
じゃあ、共通問題はこれだね。
「今日を止めずに回しながら、同じ苦しさを繰り返さない形をどう作るか」。
ここなら、二人とも当事者でいられる。
……ああ。
「理屈を後回しにするかどうか」じゃなくて、
両方をどう両立するかの話になるんだ。
たしかにたい。
俺、「整理が必要」だけを前に出しすぎて、
今日の重さを問題の外に置いてしもうとった。
これが合意形成です。
相手を折らせることではなく、
別々だった問題を、二人が一緒に持てる問題へ組み替えること。
なぜこれが大事か:共通問題がないと、技術論も空回りする
仕事の話では、解決策を早く出したくなります。
でも、共通問題ができていない段階で技術論や手順論に入ると、
結局また「それは現場を分かってない」「それは場当たりだ」の応酬になりがちです。
合意形成は、解決策を出す前に、
何に一緒に取り組むのかを揃えるための行為です。
だから、地味に見えても飛ばせません。
なんか、まだ何も決めてないのに、ちょっと前に進んだ感じするね。
うん。それが大事なのよ。
先に「一緒に解く問題」ができると、その後の技術論がちゃんと働くの。
締め:合意形成は、相手を変える前に地図を揃えること
第2回で押さえたいのは、合意形成を「説得の言い換え」にしないことです。
合意形成とは、相手を負かさず、問題の見方を揃えていくこと。
現場の事情を言語化する。
相手の論点を整理する。
そのうえで、共通問題を作る。
この流れがあるだけで、会話はかなり壊れにくくなります。
じゃあ次は、その合意形成を実際にどう進めるか。
立場理解、問題共有、選択肢、合意点。
ちゃんと技術として見ていこうか。
よかたい。次は「気持ち」やなくて、ちゃんと手順として学べるわけやね。
うん。それなら、わたしも実際に使えそう。