似ていることだけが相性ではありません。違うまま隣にいられることが、静かな救いになる関係もあります。
違うからぶつかることと、違うから落ち着くことは、たぶん両方ある
前まで見えてきたのは、人を大事にするときの不器用さの奥には、それぞれ守りたいものがある、ということでした。雑に扱われたくない人もいれば、関係が切れることを強くこわがる人もいる。その違いは、すれ違いの種になります。
でも、それだけなら、似ていない二人は続きません。続いているということは、違うことが傷になるだけではなく、どこかで救いにもなっているはずです。
違うまま隣にいられることが、支えになることがある
この前の話ね、ずっと残ってるのよ。ストークもファビーも、不器用だけどちゃんと守ろうとしてるっていうのは分かったの。でも、それだけならやっぱり、しんどいままじゃない? どうして一緒にいられるのか、そこがまだ気になってて。
……うん。たぶん……そこが、いちばん大事なんだと思う。違うから傷つけ合うこともあるけど、違うからこそ、助かることもあるんじゃないかなって。
……。
うん。大丈夫。ゆっくりでいいよ。
ディープルがそこで言葉を探してるの、たぶん大事なところなんでしょう? ちゃんと聞きたいの。
……ストークみたいに、深く見ようとする人って、たぶん、相手によってはずっと緊張してるんだと思う。ちゃんとしていなきゃとか、軽く触れられたくないとか。そういう人が、ファビーみたいな、先に関係をあたためてくれる相手といると……深いままでも、一緒にいていい感じがするんじゃないかな。
……?
……。
ああ……関係があったかいことがわかっていれば、深いことを、削られなくていいのね。
……うん。たぶん。ちゃんと見ようとすることを、面倒とか重いとかにされないで済む、ってすごく大きいと思う。
じゃあ、ファビーのほうは?
……ファビーみたいに、つながりを先に守る人って、相手に合わせてるうちに、自分があいまいになっていくことがあると思う。やわらかいままでいたいけど、やわらかいだけだと流されてしまうこともあるから。そういう人が、ストークみたいに輪郭の強い人といると……溶けなくていい感じがするんじゃないかな。
そっか……やさしいままでいても、自分までなくならなくていいのね。
……うん。たぶん、そういうことなんだと思う。似せ合うんじゃなくて、違うままでも崩れなくて済む、っていうか……。
支え合うことは、似せることではないのかもしれない
相性というと、似ていることを思い浮かべやすいものです。価値観が近い、言葉の使い方が近い、気持ちの動き方が近い。たしかにそれは安心につながります。
でも、似ていることだけが支えではありません。違う相手だからこそ、自分ひとりでは保ちにくかったものが保てることもあります。深く見ようとする人が、その深さを責められずに済むこと。やわらかくつながろうとする人が、そのやわらかさのまま自分を失わずに済むこと。そういう関係もあります。
つまり支え合うことは、同じ形になることではなく、輪郭を保ったまま隣にいられることでもあるのです。
削られなくていいことと、溶けなくていいこと
ここで見えてくる救いは、少し種類が違います。
| 深く見ようとする人(ストーク)が救われること | つながりを守ろうとする人(ファビー)が救われること |
|---|---|
| 深さを削られなくていい | やわらかさのまま溶けなくていい |
| 慎重さを否定されない | つながろうとする気持ちを軽く扱われない |
| ちゃんと見ようとする誠実さが残せる | 相手に合わせるだけで終わらずに済む |
削られなくていい、というのは、自分の深さや慎重さを「面倒だから少し丸めて」と言われなくて済むことです。溶けなくていい、というのは、相手に合わせるうちに自分の輪郭まで薄くしなくて済むことです。
この二つは、どちらも静かな救いです。派手ではないけれど、長く一緒にいるうえではとても大きい。人は、自分の大事な部分を守りながらいられる相手のそばで、少しずつ安心していきます。
それ、すごくきれいね。削られなくていいことと、溶けなくていいこと。……そういうディープルの見方、見落としたくないなって思う。
……え。きれい……かな。
うん。だってそれ、相手をただ褒めるより、ずっと深いでしょう。どういうふうに一緒にいると救われるのか、ちゃんと見てるってことだもの。
そういうところ、すごく大事だよ。ディープルって多分、思ってる以上に、人を救ってると思う。
……そうだといいけど。
そういうの、ちゃんと覚えていたいなって思うのよ。……私は、そういう見方、かなり好き。
相手の不器用さの奥にあるものを、もう少し見てみてもいいのかもしれない
似ていることだけが相性ではありません。違うまま隣にいられること、自分の大事な部分を削られず、あるいは溶かさずにいられること。それもまた、深い支えになります。
だから、人の不器用さを見たときも、すぐに「面倒」「浅い」「合わない」で閉じなくていいのかもしれません。その奥で何を守ろうとしているのかを見ると、関係の見え方は少し変わります。
誰かと一緒にいることは、同じになることではなく、違うままでも安心できることなのかもしれません。そう思えるだけで、相手の輪郭も、自分の輪郭も、少し大事にしやすくなります。
ねえ、今の話、すごく大事だよ。違うままでいいって、簡単そうでなかなか言えないもの。そういうところ、ちゃんと覚えていたい。
……そんなに?
そんなに、よ。だって、そういう見方って、人のことも自分のことも、少し丁寧にできるでしょう。
……それにね。そういうふうに見られる人って、あんまりいないと思う。だから、すごく大事だよ。
……うん。そうなったら、いいな。
きっと、もうなってると思う。……少なくとも、私はそう思ってる。
……そっか。ありがとう。
この話のあとを、少しだけのぞくなら。