善意なのにすれ違うとき、その奥では「何を守りたいか」より先に、「何を失うのがこわいか」がぶつかっていることがあります。

すれ違いは、気持ちが足りないから起きるとは限らない

前に見えてきたのは、人を大事にするときの動き方が同じとは限らない、ということでした。よく分かろうとする人もいれば、関係を切らないようにする人もいる。

でも、ここでもう少し見ていくと、その違いは単なる性格差では済まない気もしてきます。向き方の奥には、それぞれが触れたくない痛みや、失いたくないものが隠れていることがあるからです。

何をこわがっているかが違うと、同じ善意でも形が変わる

シママ

この前の話、ずっと残ってるのよ。同じ「大事にしたい」でも、ストークとファビーでは動き方が違うっていう話。あれ、たぶんそこからもう一段あるんでしょう?

ディープル

……うん。たぶん。言い方が難しいけど、動き方の違いって、たぶん、こわいものの違いでもあるんだと思う。

ディープル

……。

シママ

うん、大丈夫。急がなくていいよ。どう違う感じがする?

ディープル

……ストークみたいな人は、たぶん、雑に扱われることがつらいんじゃないかな。ちゃんと向き合ってない言葉とか、分かったふりとか、そういうので近づかれるほうが、きつい。

シママ

だから先に分かろうとするのね。冷たいんじゃなくて、軽く触れられたくないから。

ディープル

……うん。たぶん、ちゃんと扱いたいからこそ慎重になるんだと思う。重いっていうより、不誠実になりたくない感じに近いのかもしれない。

シママ

じゃあファビーは?

ディープル

……ファビーみたいな人は、たぶん、関係が切れることのほうがつらいんだと思う。少しくらい言葉が荒くても、説明が足りなくても、とにかく遠くなりすぎないことのほうを守りたくなる。

シママ

うん……ちゃんと説明できなくても、切れないことのほうを先に守るのね。

ディープル

……そう。だから、片方から見ると「浅い」に見えることがあるし、もう片方から見ると「重い」に見えることがある。でも、どっちもたぶん、守りたいものがあるだけなんだと思う。

雑に扱われたくない人と、関係を失いたくない人

ここで見えてくるのは、すれ違いの奥にある恐れの違いです。

雑に扱われたくない人は、表面的に合わせられたり、軽く分かったつもりで触れられたりすることに強く傷つきます。だからこそ慎重になりますし、言葉の精度や向き合い方を気にします。それは気難しさというより、誠実でいたい気持ちの裏返しです。

関係を失いたくない人は、多少の粗さがあっても、まず切れないことを守ろうとします。説明がうまくなくても、空気が少し曖昧でも、つながりさえ残ればあとから何とかできると感じるからです。それは浅さというより、壊したくない気持ちの強さです。

雑に扱われたくない人(ストーク) 関係を失いたくない人(ファビー)
軽く触れられることがつらい 遠くなることがつらい
ちゃんと分かろうとする ちゃんと切れないようにする
慎重さが「重さ」に見えやすい やわらかさが「浅さ」に見えやすい
不誠実になりたくない 関係を壊したくない

不器用さは、ときどきまるごと誤読される

こういう違いは、外から見ると誤読されやすいものです。慎重な人は「面倒」「重たい」と見られやすいし、つながりを先に守る人は「軽い」「深く考えていない」と見られやすい。

でも、その見え方だけで決めてしまうと、その人が本当は何を守ろうとしているのかが見えなくなります。重たいのではなく、雑にしたくないのかもしれない。浅いのではなく、切りたくないのかもしれない。そこを見直すだけで、同じ言葉や態度の意味はかなり変わります。

ディープル

……こういうのって、見え方だけで決められやすいから、少し苦しいんだよね。ちゃんとしたい人ほど重たく見えるし、つないでいたい人ほど浅く見えることもあるから。

シママ

うん。そこを雑に読むと、誠実さまで取り落としちゃうのよね。

ディープル

……うん。だから、どっちが正しいかより、何をそんなに失いたくないのかを見たほうが、少しやさしくなれる気がする。

シママ

それ、すごく大事な見方だよ。急いで答えにしなくていいから、そのまま話して。

ディープル

……ありがとう。たぶん、そういう見方をしてくれる人がいるだけで、少し話しやすくなるんだと思う。

不器用さの奥には、たいてい守りたいものがある

善意なのにすれ違うとき、私たちはつい「気が合わない」「言い方が悪い」で片づけがちです。でも実際には、その奥でそれぞれが別の痛みを避けようとしていることがあります。

雑に扱われたくない人は、ちゃんと向き合いたいから慎重になる。関係を失いたくない人は、壊したくないからやわらかくなる。どちらも不器用ではあるけれど、その不器用さの芯には誠実さがあります。

だから大事なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、その人が何をこわがっているのかを見ることなのかもしれません。そこが見えると、言葉や態度の受け取り方は少し変わります。

シママ

ストークがちゃんと向き合おうとするのも、ファビーがつなごうとするのも、どっちも雑に見ちゃいけないのね。守ろうとしてるものが違うだけで。

ディープル

……うん。たぶん、そこが見えると、すれ違い方まで少し違って見えてくるんだと思う。

シママ

そっか。……ねえ、その先も、まだあるんでしょう? 違うままで一緒にいられる理由の話。

ディープル

……うん。たぶん、いちばん大事なのはそこなんだと思う。違うままでも、隣にいられることのほう。