資料請求番号:TS11
スポンサーリンク部分分数分解とは、例えば
の積分の計算や
のようなラプラス逆変換を行う際に必要な作業で、
のような形にすることができれば、
積分計算の公式あるいはラプラス変換表から求められている関数を得ることができます。
今回は、この部分分数分解を行う方法を高校で学ぶ通分による方法と、
大学以降の教科書に明記されている、通分による方法よりも単純でミスのリスクも少ない方法(=Heavisideの展開定理)を紹介します。
を部分分数分解せよ。
①定数A,Bを置く
②右辺を通分する。
③左辺の分子と右辺の分子が恒等式になるよう、Aの値とBの値を決定する。
よって、
となる。
このようにして、定数を決め、通分して、通分した結果の分子が恒等式になるように定数を決定する方法を高校で教えられるかと思いますが、通分して連立方程式を解かずとも、定数を決定することができる簡単な方法があります。それがHeavisideの展開定理を使用した方法なのです。
①定数A,Bを置く
ここまでは先ほどと同じです。
②両辺にsをかけたのち、s=0を代入する。
そしたらどうでしょう。Bが消え、Aがワンステップで求められることがわかります。
③同様に両辺にs+2をかけ、s=-2を代入する。
両辺に掛けた値(今回はs+2)が0になるように代入するsの値を決めなければいけません。
これで、AもBも求められたので
となります。
を部分分数分解せよ。
①定数A,B,Cを置く
(s+3)2のような、sの解に重解がある場合には、一工夫が必要です。まず、与えられた分数は
のように置いて分解を行います。
②(s+3)2をかけ、s=-3を代入する
これにより、Bを求めることができます。
③次にAを求めなければいけませんが、どのようにして求めたらよいでしょうか?
両辺にs+3を掛けてs=-3を代入すると、「ゼロ除算」という操作が必要になってしまいます。
では、右辺にAだけを残して他の項を消す方法はあるのでしょうか?
Bを求める際、与式に(s+3)2をかけてs=-3を代入する前の式がここにあります。
これを両辺微分し、s=-3を代入すれば右辺にAだけが残ることになります。
右辺、Cを含む項は(s+3)2を含みますから、微分したときに(s+3)が残ることは明らかです。
従って、
のようにAの値を求めることができます。
④残りのCですが、これはs+1を両辺にかけ、s=-1を代入すれば求めることができます。
以上より、
となります。
今回は、高校数学で学習する部分分数分解方法(未定係数を決め、通分して、その結果が恒等式となるように未定係数を決定する方法)を解説したのち、
通分しなくても右辺に未定係数だけが残るように式変形と代入を施し、未定係数を決定するHeavisideの展開定理による方法を説明しました。
通分してsやxについて式変形したのち、恒等式となるように連立方程式を立てる方法よりも、Heavisideの展開定理を用いた方法の方が圧倒的に簡単でミスも起こりにくいと思います。
最後に、分数に重解を含む項が含まれている場合の部分分数分解の方法を説明しました。