Categories: 化学/物理

蒸気圧・気液平衡と精留塔の仕組み

資料請求番号:TS55

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精留塔の原理を基礎(気液平衡と蒸気圧の話)から説明

精留塔の原理と言葉の定義

精留とは蒸留の一種で、還流を伴う蒸留のことを精留と呼びます。
精留塔とは単位操作としての精留を行うための装置です。

化学工場では、原料を反応させたのち、何らかの方法でそれをきれいにして(=純度を上げて)
次の工程の原料とするか、製品として販売しています。精留は物質の純度を高める方法の一つです。

蒸留は小中学校の理科で
「物質の沸点差を利用して物質を分離する方法」
というように習います。

沸点差というものはそのまま「蒸気圧差」に置き換えて考えることができます。
物質を密閉容器の中に入れ、一定温度で放置すると容器内で物質の蒸発と凝縮が起こり、最終的にはその2つの速度が同じになります。この状態を気液平衡と呼び、その時の圧力(正確には分圧)をその物質の蒸気圧と呼びます。

同じ温度で、蒸発しやすいものは蒸気圧が高くなり、蒸発しにくいものは蒸気圧が低くなります。

ここで、蒸気圧の高い物質と蒸気圧の低い物質が混合していたとして、その混合物を密閉容器に入れ、温度を一定にし、気液平衡状態にしたらどうなるでしょうか?
液体部分(=液相)よりも気体部分(=気相)のほうが「蒸気圧の高い物質」の濃度が高くなっているはずです。

その気相を凝縮して、今度はさっきよりも少し高い温度でもう一回気液平衡状態にしたら、さらに蒸気圧の高い成分の濃度が高くなります。

このようにして、蒸気圧差で物質を繰り返し分離していく操作を連続蒸留と呼びます。化学工場での蒸留操作は連続蒸留が一般的になっているので、連続蒸留のことを単なる蒸留と呼ぶことが多いです。

さらに還流を伴う連続蒸留を精留と呼び、そのための装置を精留塔と呼びます。

計算で使う文字について

精留塔を設計するにあたり、精留塔に投入する物質の気液平衡関係や物質収支に基づく式を立てるのですが、その数式を取り扱う時の文字の話をしておきます。
なぜ、あえて、見出しを作って文字の定義をしているかといいますと、教科書や便覧に書かれている文字の定義が「ややこしい」と思っているからです。

蒸気圧の低い物質は高沸点ですので「高沸点成分」、蒸気圧の高い物質は「低沸点成分」と呼びます。ここで、以後使われている文字は「低沸点成分」だけを指していると考えてください。

気液平衡に達したとき、液相における低沸点成分濃度をx
気相における低沸点成分濃度をyで表します。

これをしっかりと頭に入れた前提で、以下の図の説明をします。

精留塔にFの流量で原料を供給し、その低沸成分濃度はxFです。qは原料の液割合を表します。q=1では沸点の液での供給、q=0では沸点の蒸気での供給となります。

原料は、精留塔の塔頂でもなく塔底でもなく、中間から供給することが多いです。原料を投入する段を「原料供給段」と呼びます。

塔頂からはDの流量で低沸成分濃度の精製物を得ます。その低沸成分濃度はxDです。

塔頂で低沸成分濃度が高くなっているということは、塔底ではその濃度は低くなっています。その流量をW、濃度はxWです。

塔頂で得られる液を留出液、塔底で得られる液を缶出(かんだし)液と呼びます。

塔内では、液相が下に流れ落ち、気相が上へ上昇しています。液相の落とし方や蒸気の通し方によって蒸留塔の効率が変わったりしますが、これは速度論のお話ですので、今回は置いておきます。

液相が下へ流れ落ちる流量は原料供給段以上の段と以下の段で異なります。原料供給段以上での液相の流量をL、原料供給段以下での液相の流量をL‘とします。LL‘の違いは物質収支をとるうえで重要になるので、Lの流量で流れているラインを青色、L‘の流量で流れているラインを濃い青色(=藍色)で示します。

気相が上へ昇る流量は原料供給段以上ではV、以下ではV‘で表現します。Vは赤色、V‘は桃色で示します。

精留塔の一番上の段を「2段目」とします。2段目から発生する蒸気の低沸点成分組成をy2、2段目から落ちる液体の低沸点成分濃度をx2とします。

「2段目」には液体の低沸点成分濃度をx1とする「還流液」を入れるので、xの下付きの表現の関係上、一番上を「2段目」とします。

同様に「3段目」発生する蒸気の低沸点成分組成をy3、3段目から落ちる液体の低沸点成分濃度をx3とします。

このような表現が塔底まで続くのですが、原料供給段では、液体流量はqFだけ、気体流量は(1-q)Fだけ、増加します。

その増加は原料供給段が5段だった場合、y5, x5の計算から適用します。例えば5段目から上がる蒸気の低沸点成分の流量はVy5,ですが、6段目から上がってくる低沸点成分の流量はV’y6になります。反対に、4段目から落ちてくる液の流量はLx4,5段目から落ちる液の流量はL’x5です。

まとめ

今回は、単位操作としての精留を言葉の意味から説明し、どのような仕組みになっているのかを説明しました。

・物質の蒸気圧差を利用して、蒸気圧の高い物質と低い物質に分ける操作を蒸留といいます。

・蒸留したとき、気相は低沸点成分濃度が高い状態にあるので、これを凝縮し、再び蒸留を行うと、さらに低沸点成分濃度を高めることができます。

・上記を繰り返す操作を連続蒸留と呼びます。

・蒸留のうち、還流を伴う蒸留を精留と呼び、それを行うための装置を精留塔と呼びます。精留塔は以下のように簡略化されて解析に使用されます。

・上記の図において、2段目から発生する蒸気の低沸点成分組成をy2、2段目から落ちる液体の低沸点成分濃度をx2と表現します。

・原料供給段以上の段と、以下の段とでは、上から下へ落ちる液の流量と下から上へ上がる蒸気の流量が異なるため、原料供給段以上ではL及びV, 以下ではL‘およびV‘で表現します。

以上を理解したら、次は精留塔をモデル化し、精留塔の性能を評価したり、精留塔内の濃度分布を求めてみましょう。

資料請求番号:TS55McCabe-Thieleによる階段作図を連立方程式にする本ページは下記資料の内容を理解していることを前提に話を進めています。精留塔とは気液平衡とは何か?については下記資料をご覧ください。はしがき工学部化学系の学生は「分離工学」あるいは「化学...
精留塔に関するMcCabe-Thiele法を連立方程式にして解いて塔内濃度分布を求める - らい・ぶらり
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