こちら↓の記事でラプラス変換の基礎的な説明と簡単な演習を行いました。
今回は、ラプラス変換による微分方程式の求解に慣れてきた人のために、より一般化した、すなわち複雑な微分方程式の例題を取り扱っていきたいと思います。
$$
R i(t) + L \frac{di(t)}{dt} + \frac{1}{C} \int_{0}^{t} i(t’) dt’ = V_0
$$
さらに、今回はステップ関数Θを使用し、ある時刻t=0において、回路のスイッチを入れたとき、その応答はどのようになるか?を計算します。
$$
R i(t) + L \frac{di(t)}{dt} + \frac{1}{C} \int_{0}^{t} i(t’) dt’ = V_0 \Theta(t)
$$
このようなステップや、後ほど取り扱うインパルスに対する過渡応答の解析と言うのはラプラス変換の得意とするところです。
上の式を微分します。ステップ関数は微分するとインパルス関数になります。
$$
R i(t) + L \frac{di(t)}{dt} + \frac{1}{C} \int_{0}^{t} i(t’) dt’ = V_0 \Theta(t)
$$
$$
L \frac{d^2 i(t)}{dt^2} + R \frac{di(t)}{dt} + \frac{i(t)}{C} = V_0 \delta(t)
$$
さらに、両辺をLで割ったこの式をラプラス変換していきます。
$$
\frac{d^2 i(t)}{dt^2} + \frac{R}{L} \frac{di(t)}{dt} + \frac{i(t)}{LC} = \frac{V_0}{L} \delta(t)
$$
まず、1項目をラプラス変換すると以下のようになります。(※ここで?になった方はこちらをチェック!)
$$
\mathcal{L} \left[ \frac{d^2 i(t)}{dt^2} \right] = s^2 \mathcal{L}[i(t)] – s i(0) – \frac{di(0)}{dt}
$$
求めるべき関数$i(t)$のラプラス変換を$I(s)$とおき、
$$
\mathcal{L}[i(t)] = I(s)
$$
回路のスイッチを入れる瞬間$t=0$では電流が流れていないことから
$$
i(0) = 0 \quad \text{and} \quad \frac{di(0)}{dt} = 0
$$
よって
同様に他の項もラプラス変換すると、以下のような代数方程式が得られます。
1.
$$
\mathcal{L} \left[ \frac{d^2 i(t)}{dt^2} \right] = s^2 I(s)
$$
2.
$$
\mathcal{L} \left[ \frac{R}{L} \frac{di(t)}{dt} \right] = \frac{R}{L} s I(s)
$$
3.
$$
\mathcal{L} \left[ \frac{i(t)}{LC} \right] = \frac{1}{LC} I(s)
$$
4.
$$
\mathcal{L} \left[ \frac{V_0}{L} \delta(t) \right] = \frac{V_0}{L}
$$
これらより、
$$
s^2 I(s) + \frac{R}{L} s I(s) + \frac{1}{LC} I(s) = \frac{V_0}{L}
$$
$$
\left( s^2 + \frac{R}{L} s + \frac{1}{LC} \right) I(s) = \frac{V_0}{L}
$$
よって、
$$
I(s) = \frac{\frac{V_0}{L}}{s^2 + \frac{R}{L} s + \frac{1}{LC}}
$$
さらに、$B=\frac{R}{L}$, $\omega_0^2 = \frac{1}{LC}$と置くと
$$
I(s) = \frac{\frac{V_0}{L}}{s^2 + B s + \omega_0^2}
$$
RLC直列回路の過渡応答は
$$
b^2 = \omega_0^2 – \frac{B^2}{4}
$$
この値によって解の形が変化します。
以下、3つの場合分けを行います。
$$
I(s) = \frac{\frac{V_0}{L}}{s^2 + Bs + \omega_0^2}
$$
ラプラス逆変換を行います。
$$
\mathcal{L}[e^{-at} \sin \omega t] = \frac{\omega}{(s + a)^2 + \omega^2}
$$
これを置き換えると、
$$
\mathcal{L} \left[ e^{-\frac{B}{2} t} \sin bt \right] = \frac{b}{s^2 + Bs + \omega_0^2}
$$
ゆえに
$$
i(t) = \frac{V_0}{L} \frac{1}{b} e^{-\frac{B}{2} t} \sin bt
$$
$$
b^2 = \omega_0^2 – \frac{B^2}{4} = 0
$$
より、
$$
I(s) = \frac{\frac{V_0}{L}}{(s + \frac{B}{2})^2}
$$
ラプラス逆変換より、
$$
i(t) = \frac{V_0}{L} t e^{-\frac{B}{2} t}
$$
$$
I(s) = \frac{\frac{V_0}{L}}{s^2 + Bs + \omega_0^2}
$$
この場合は
$$
i(t) = \frac{V_0}{L} \frac{1}{\sqrt{-b^2}} e^{-\frac{B}{2}t} \sinh(\sqrt{-b^2} t)
$$
次は、以下の方程式をラプラス変換によって解きます。
$$
\frac{d^2 x(t)}{dt^2} = -\omega_0^2 x – 2\gamma \frac{dx}{dt} + \frac{F}{m\omega_0} \delta(t)
$$
一瞬だけ$F/m\omega_0$なる刺激を与えると、物体はどう運動するか?
初期条件は
$$
x(0) = 0, \quad \frac{dx(0)}{dt} = 0
$$
ラプラス変換していくと、
1.
$$
\mathcal{L} \left[ \frac{d^2 x(t)}{dt^2} \right] = s^2 X(s)
$$
2.
$$
\mathcal{L}[-\omega_0^2 x] = -\omega_0^2 X(s)
$$
3.
$$
\mathcal{L}[-2\gamma \frac{dx}{dt}] = -2\gamma (sX(s))
$$
4.
$$
\mathcal{L}\left[\frac{F}{m\omega_0}\delta(t)\right] = \frac{F}{m\omega_0}
$$
より、
$$
s^2 X(s) = -\omega_0^2 X(s) – 2\gamma s X(s) + \frac{F}{m\omega_0}
$$
整理して、
$$
(s^2 + \omega_0^2 + 2\gamma s) X(s) = \frac{F}{m\omega_0}
$$
$$
X(s) = \frac{\frac{F}{m\omega_0}}{s^2 + \omega_0^2 + 2\gamma s}
$$
ここで、
$$
\mathcal{L} \left[e^{-\gamma t} \sin \sqrt{\omega_0^2 – \gamma^2}t \right] = \frac{\sqrt{\omega_0^2 – \gamma^2}}{s^2 + 2\gamma s + \omega_0^2}
$$
を用いると、
$$
X(s) = \frac{F}{m\omega_0} \frac{1}{s^2 + 2\gamma s + \omega_0^2}
$$
より
$$
x(t) = \frac{F}{m\omega_0} \cdot \frac{1}{\sqrt{\omega_0^2 – \gamma^2}} e^{-\gamma t} \sin \sqrt{\omega_0^2 – \gamma^2} t
$$
以上のように、ラプラス変換を用いて、RLC回路やバネダッシュポット系のような複雑な微分方程式も体系的に解くことができました。