【連載第2回】化学プラントの装置・機器を理解する:ポンプ・圧縮機・容器・配管の基礎知識
1. 装置・機器の基礎知識がなぜ重要?
ストーク、前回の基礎化学はすごくためになったわ。今回は装置や機器の話なんだって?
そうたい。基礎化学だけやったら、現場で「なんか分かりそうだけど動かせん…」ってなるっちゃね。
実際に装置がどう動くかを知らんと、プラントのトラブルにも即時対応できんけん。
化学プラントで安定して生産を行うためには、装置・機器の仕組みや特性を理解しておくことが欠かせません。
たとえ化学反応を完璧に最適化しても、ポンプ選定を誤れば詰まりや吐出量不足で計画が大幅に狂うかもしれません。
そこで今回は、主要な装置の種類や構造、運用時のポイントをまとめます。
2. ポンプの種類と特徴
ポンプって、化学プラントでも絶対使うイメージだけど、どんな種類があるの?
めちゃたくさんあるけん、代表的なとこだけ押さえておこうか。
大きく分けると「遠心ポンプ」と「容積式ポンプ」が主要なタイプやね。
ポンプの主要区分としては、回転羽根の遠心力や揚力によって流体を移送する「ターボ型ポンプ」と、ポンプ内部の容積変化を利用する「容積式ポンプ」があります。
ターボ型ポンプ:
- 遠心ポンプ:
- 羽根車の遠心力を利用して流体を移送。
- 高流量向き、構造が比較的シンプル、低粘度液体向き
- 斜流ポンプ:
- 遠心力と揚力の両方を利用して流体を移送。
- 遠心ポンプと軸流ポンプの中間の性能、流量と圧力をバランス良く得られる
- 軸流ポンプ:
- 羽根車の揚力を利用して流体を軸方向に移送。
- 高流量、低揚程向き、低粘度液体向き
容積式ポンプ:
- 往復ポンプ(レシプロポンプ):
- ピストンやプランジャの往復運動によって流体を移送。
- 高圧向き、粘度が高い液体にも対応可能、脈動が発生しやすい
- 回転ポンプ:
- 回転体の回転運動によって流体を移送。
- ギアポンプ:
- 歯車の回転によって流体を移送。
- 高粘度液体向き、構造がシンプル、脈動が少ない
- ロータリーポンプ:
- ローターの回転によって流体を移送。
- 高粘度液体向き、種類が豊富(スクリューポンプ、ベーンポンプなど)
各ポンプの特徴まとめ
ポンプの種類 |
流量 |
圧力 |
粘度適性 |
特徴 |
遠心ポンプ |
高 |
中~低 |
低 |
高流量、構造がシンプル |
斜流ポンプ |
中~高 |
中 |
低~中 |
流量と圧力をバランス良く得られる |
軸流ポンプ |
高 |
低 |
低 |
高流量、低揚程 |
往復ポンプ |
低~中 |
高 |
高 |
高圧、粘度が高い液体に強い、脈動が発生しやすい |
ギアポンプ |
低 |
中~高 |
高 |
高粘度、構造がシンプル |
ロータリーポンプ |
低~中 |
中~高 |
高 |
高粘度、種類が豊富 |
うちのプラントの一部プロセスでは、腐食性の液体を扱うラインに、ロータリーポンプの中でも特にスクリューポンプを採用しとるよ。ロータリーポンプは粘度の高い液体にも強いし、スクリューポンプは脈動も少ないから、腐食対策に加えて安定した流量を保つことができるんや。シールレスタイプを選んどるのも、腐食性の液体が漏れるリスクを減らすためやで。
なるほど、素材選びも含めて一筋縄じゃいかないのね。奥が深いわ。
3. 圧縮機の種類と原理
圧縮機って、ガスを圧縮する機械…くらいの理解しかないんだけど。
まあ、名前の通りっちゃけど、ガスを高圧にして移送や貯蔵しやすくする装置やね。
種類もレシプロ型、ロータリー型、ターボ型なんていっぱいあるばい。
ガスを圧縮する際に用いる圧縮機は、大きく以下のターボ型と容積型に分類されます。
ターボ型圧縮機:
-
軸流式圧縮機:
- 軸方向に流れるガスを羽根で加速・圧縮
- 高流量で低圧力比向き
-
遠心式圧縮機:
- 羽根車(インペラ)の遠心力でガスを圧縮
- 大流量の処理が得意、比較的広い圧力範囲に対応
- 高回転が必要なため、設備投資や保守コストも大きい
容積型圧縮機:
-
往復式圧縮機(レシプロ型):
- ピストン往復運動でガスを圧縮
- 高い圧力が得やすいが、振動や騒音が大きめ
- 周期的なメンテナンスが重要
-
回転式圧縮機:
- スクリュー式圧縮機:
- スクリューの回転でガスを圧縮
- 比較的安定した圧縮、中流量に対応
- スクロール式圧縮機:
- スクロールの回転運動でガスを圧縮
- 振動が少なく、静音性が高い
- その他:ロータリー式圧縮機(ベーン式など)
圧縮機を選定する際は、目標とする圧力や流量、ガスの特性、運転コストなど多角的に検討する必要があります。
レシプロ型は構造がわかりやすい分、定期オーバーホールが鍵になるっちゃ。稼働音もうるさいけん、防音対策も忘れんごとせんといかんね。
防音や振動対策まで考えるとなると、本当にプラント設計って大変だなあ…。
4. 容器・タンクの基礎:素材と安全性
次は容器やタンクの話?ステンレスとか鉄とか、素材もいろいろあるよね。
そうやね。酸や塩基を扱うならステンレスも種類を選ばんとあっという間に腐食したりするけん、気をつけなあかんよ。
化学プラントや実験室で使われる容器・タンクは、内容物の性質や圧力・温度条件に合わせた材質選定と設計が重要です。
- ステンレス鋼(SUS304・SUS316など):
- 酸・塩基にある程度強いが、塩化物環境では腐食リスクあり
- 食品・医薬向け設備でもよく使われる
- 溶接や表面処理によって耐久性が変わる
- カーボン鋼:
- 機械的強度に優れ、価格が安い
- 防錆塗装やゴムライニングなど追加処理が必要な場合も
- 高圧タンクでは強度計算が必須
- ガラスライニング・樹脂ライニング:
- 高い耐食性が得られる
- 衝撃に弱い、温度変化に注意など運用上の制約あり
- 主に高腐食性の薬品を扱うラインで採用
また、加圧タンクの場合は、安全弁や圧力計、温度計などを適切に設計・配置する必要があります。
塩化物イオンが多い環境じゃステンレスも穴が開くっちゃけんね。実は甘くみとったらいかんとよ。
穴が開くって…想像すると怖い。浸透して気づいたらリークとか、本当にありそうでゾッとするわ。
5. 配管・バルブの選定とレイアウト
配管とバルブもめっちゃ種類あるよね…。何を基準に決めるの?
そりゃもう流体の性質、圧力、温度、流量、コスト…いろんな要素を勘案するばい。あとメンテナンス性も大事やね。
配管はプラント内の血管のような役割を担う重要部位です。
- 材質選定:
- ステンレス鋼、炭素鋼、PVC、FRPなど
- 流体の腐食性や温度、圧力に合わせる
- 内径・スケジュール(肉厚)の決定:
- 流速や流量を考慮して圧損を最小化
- 高圧ラインでは厚肉の配管が必須
- 保温・断熱の実施:
- 熱ロスを防ぎ、プロセス温度を保つ
- 凍結防止や安全対策としても重要
また、バルブにはゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブなど多数の種類があり、圧力損失やシール性、操作性を考慮して選定します。
現場じゃ配管の取り回しが変わるだけでも、メンテスペースやアクセスが大きく左右されるとよ。下手に交差させてしまうと、点検が地獄になることもあるけんね。
設計段階でしっかりレイアウトを検討しないと、後から痛い目に遭うのね。怖いけど面白そう!
6. メンテナンスとトラブル事例
やっぱり一番知りたいのは、どうやってトラブルを防ぐか、あるいは起きたときにどうするかよね。
これ、痛い目見る前に知っとったほうがよかね。ポンプが詰まって破損したり、圧縮機がオーバーヒートしたり…トラブルはよく聞く話たい。
装置や機器を正常に稼働させるためには、定期的なメンテナンスと予防保全が不可欠です。
- ポンプの詰まり・シール不良:
- 異物や固形分の混入対策(ストレーナー設置など)
- メカニカルシールやパッキン類の定期交換
- 圧縮機の振動・過熱:
- 軸受けや潤滑系統の点検
- 冷却水・潤滑油の循環不良がないかチェック
- 容器・タンクの腐食・亀裂:
- 定期的な肉厚測定と非破壊検査(UT、RTなど)
- ライニングの剥がれやピンホールの早期発見
- 配管・バルブの漏洩・詰まり:
- パッキン・ガスケット類の摩耗点検
- 凝固性の高い流体が詰まらないよう保温・スチームトレース
また、異常振動や異音、温度上昇などの兆候を見逃さず、早期の対策を講じることが大切です。
うちなんか、ポンプにネジが落ちて詰まっとったことあったばい。目も当てられん状況になる前に、点検や掃除は大事ばい。
ははは、それはさすがにやばいね…でも笑えない話。
まとめ
ここまでの話をまとめると、装置の選定を誤れば運転コストも上がるし、故障率も高まって大損害につながるっちゃ。
逆に言えば、適切に選んでメンテすれば、長期的に安心して使い続けられるけんね。
ありがとう、ストーク。ポンプと圧縮機から容器、配管まで、一通り押さえた気がするよ。やっぱりちゃんと理屈があるのね。
装置・機器の基礎知識を身につけることで、化学プラントの安定稼働やコストダウン、そして安全管理に大きく貢献できます。
ポンプや圧縮機は流体・ガスを扱う要の装置ですし、容器や配管の設計・素材選定を誤ると重大な事故につながる恐れもあります。
一歩ずつ、各機器の特性やメンテナンスポイントを学んでいきましょう。
次回予告:「圧力・温度管理の重要性と安全設計」
次回は圧力と温度管理やね。高圧ガスの扱いとか、本格的にヤバか要素が多いっちゃけん、気合い入れていくばい。
高温高圧は何となく怖いイメージがあるから、ちゃんと学んでおきたいな。楽しみにしてる!
次回の第3回では、圧力と温度の管理や安全装置の設計思想について掘り下げます。
運転条件を誤ると設備破損や事故リスクが跳ね上がるため、しっかり理解しておきましょう。
それでは、次回もお楽しみに!