カメラが色を識別する仕組みを理解して、RAW現像で高画質な写真を創る





カメラが色を識別する仕組みを理解して、RAW現像で高画質な写真を創る



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写真を撮ったとき「赤色が赤色に写る」仕組みと理由を色彩工学の理論から理解し、被写体の色を正しく表現する

私たちが赤い物の写真を撮ったとき、カメラは赤い写真を仕上げてくれます。今回は「カメラが赤い物を赤く写すことのできる理由」について追及してみたいと思います。

色の見え方の科学

カメラが色を認識する仕組みは、ヒトが色を認識する仕組みとほぼ同じです、というより、ヒトがカメラを作るとき、ヒトやその他動物の眼の仕組みを参考にしたというのが正しい考え方かと思います。
ヒトが色を認識する仕組みについては以下の記事で説明しております。
[blogcard url=”http://shimaphoto03.com/science/eye/”]

RGB表色系

1931年に発表された等色実験により、ある波長λの光の刺激に対しヒトの赤・緑・青の錐体細胞がどの程度寄与して神経細胞を通じて色を認識しているのかが、数学的に表現できるようになりました。

上記の図と式からヒトは580nmの光を視たときに、赤錐体が0.27くらい感じ取り、緑錐体が0.13くらい感じ取って結果として黄色に視える。という処理を行っていることが想像できます。

これと同じようにカメラのイメージセンサにも
赤を認識する画素
緑を認識する画素
青を認識する画素
を用意して、イメージセンサに当たった、ある波長の光に対して

赤の画素はこれくらいの強度を認識し、
緑の画素はこれくらいの強度を認識し、
青の画素はこれくらいの強度を認識し・・・

と数値化できれば、カメラでも色を表現できることになります。

それを行うためには、膨大な計算(線形変換)を行わなければならないのですが、RGB等色関数に負数があることがネックになっていました。
現在は何十元多元連立方程式がものの数秒で解けてしまうコンピュータが一家に一台レベルになっているので、光学機械設計において等色関数に負数があることは、問題にはなりませんが、手計算と計算尺の当時では負数があることで計算が煩雑になることが問題視されていました。

XYZ表色系

計算を行う上で等色関数に負数があるというのは、少々不便であるという考え方から、RGB等色関数と同じような働きができる関数形を求めるようになりました。これがXYZ表色系です。

RGB表色系と同様、こちらも以下の式

で定義され、RGB表色系と同様、可視光の波長の色全てを3色の強度の線形結合で表現できる、という仕組みになっています。

RGB表色系とXYZ表色系の等色関数は以下の行列Aで「写す」ことができます。

行列AでRGBからXYZへ写像できるということは、もちろん逆行列A-1でXYZからRGBへ「戻す」こともできます。

シャッターを押してから色味が決定する流れ

カメラのイメージセンサはヒトの赤錐体・緑錐体・青錐体と同じように、
赤色を感じる画素/緑色を感じる画素/青色を感じる画素
があり、以下の図のように配置されていることが多いです。(※例外:Foveonセンサ)

このような配列を専門用語で「ベイヤー配列」と呼ぶそうです。

イメージセンサに当たった、ある波長の光を三種類の等色関数の線形結合で表現し、各色の強度を電荷量に変換することで、信号処理を可能にし、色を再現しています。

網膜やセンサに当たる光の強度をどうやって表現するか?

これまで、お話ししてきた内容と言うのは、
「とある波長λの光を如何にして3色の光だけで表現するか?」
という内容で、それを行うためには「ベクトルの線形結合」と同じようにして考えればよいだろう、ということで

RGB表色系

やXYZ表色系

の等色関数F(λ)という概念が出てきました。

ところが、このF(λ)という関数の表記方法では

例えば、
波長440nmくらいの、眩しい光と
波長540nmくらいの、それなりの強さの光と
波長610nmくらいの、微妙に暗い光があったとして、その光は人間の目やカメラのセンサにどのように視えるか?

という質問に答えることができません。波長440nmの色の作り方は分かっても、それが明るかったり暗かったりの数的表現はできないのです。

人間に上記の質問を投げかければ、感覚的に
「赤っぽく視える」と答えるでしょう。
しかし、カメラに上記の質問を投げても、何も答えは返ってこないはずですが、おそらく私たちはカメラを使って簡単に赤っぽい写真を作ることができるでしょう。

人間の脳内やカメラの画像エンジンでは以下のようなアルゴリズムに従い

以下のような演算を行っています。

積分記号の右下にある「VIS」は「可視光範囲の波長で積分する」ことを表現しています。P(λ)は波長λにおける光源の強度(明るさ、眩しさ)、ρ(λ)は波長λにおける物体が発する光あるいは反射する光の強度(明るさ、眩しさ)です。
これで波長440nmくらいの、眩しい光があればP(440)が大きくなるので、これと等色関数とr(440)と掛け算されることにより、赤く眩しい光は赤く眩しい光としてカメラに記録することができます。

仕上がりの写真に違和感を感じる理由

写真を撮ったとき、仕上がった写真がやけに黄色かったり、青かったりとイメージと異なる色味を感じることがあると思います。

これは、光源の光に色があるため、それが物体に当たったとき、物体の色と混色された状態で写真が撮れてしまうからです。

数学的に言えば、人間の眼、あるいはイメージセンサにはP(λ)ρ(λ)の色が視えることになります。

人間の場合、例えばひまわりを観ていたら「ひまわりは黄色」という”感覚”があるため、ある程度、他の色の光源を浴びていても黄色に視えるのですが、

良く晴れた青空の下、カメラで撮影した場合、カメラが視た光をそのまま信号にして処理して画像化するので「青味かかった黄色」が得られてしまい、結果として私たちが写真を見直したとき「なんだか黄色っぽくない」と感じてしまうのです。

ホワイトバランス

上記のような違和感を解決するために、ホワイトバランスという機能が一眼レフには備わっています(最近のスマホにも備わっていることが多くなりました)
ホワイトバランスの機能は、カメラに対し「被写体には○○色の光が当たっているから、その色の影響をキャンセルしてください」と指示する機能です。

例えば、「晴天日陰」モードで撮影すると、写真は赤みのかかった色になります。これは、実際の「晴天日陰」のシチュエーションでは光源が青く、写真が青くなりがちなので、それを補正するために赤みをつけるのです。

従って、光源のシチュエーション、光源の色温度に合わせてホワイトバランス値を設定すると自然な色の写真が撮れるのです。

RAW現像

RAW現像とJpeg撮って出しの違い

撮影した後に、写真の色味を調整したり、ある特定の部分だけ明るさを変更したりする方法があります。これがRAW現像です。
RAW現像については、非常にわかりやすい図で説明したWebページがありましたので、こちらを紹介いたします。
かめらと。様 RAW現像って何?RAWとJPEGのメリットデメリットとRAW現像による写真の違い

写真撮影を行った際、イメージセンサにぶつかった光を赤緑青の3種類の画素が感光してその組み合わせ(線形結合)で色を表現しているという話を先ほど行いましたが、
カメラではその後、「画像処理エンジン」を用いて、赤緑青の3種類の画素の感光量から、人間が見たときに自然な仕上がりの写真になるように、色味を自動で調整し、写真として完成させてくれます。調整したのち、不必要になった色データは削除されます。

RAWの場合は画像処理エンジン使用せず、写真を撮ったときの赤緑青の3種類の画素の感光量だけのデータを取得します。
したがって、RAWで撮ったばかりの状態では「ただのデータの集合体」であり、写真として完成していません。
撮った後にパソコンを使用してPhotoshopなどの専用ソフトで、撮影者の手で写真として完成させるのです。

RAW現像が高画質と言われる理由

しばしば、「RAW現像は高画質」という言葉がネット上で転がっておりますが、RAWで撮った写真自体の画質はjpeg撮って出しと変わりません。では、どういうシチュエーションでRAWの方が高画質となるのでしょうか?

それは、色味や明るさの加工を行ったときです。

jpeg画像の重さは6MB程度であるのに対し、RAW現像前の画像の重さは約25MBもあります。RAW画像がなぜこんなにも重いのかと申しますと、写真を撮ったときの赤緑青の3種類の画素の感光量の情報全てを残しているからです。従って「色味がおかしいので調整したい」となったときに、画質を保ったまま調整し、自分の判断で要らない色の情報を排除してjpegを作成することができるのです。

ところが、jpeg撮って出しの場合、画像処理エンジンが
「これなら、人間の目でみたとき、違和感なく仕上がるだろうから、取得した光の情報のうち、要らない情報は消してしまおう」
というアルゴリズムを動かしてしまいます。したがって、jpeg写真の重さは約6MBとスリムになってしまい、加工の範囲は限られるようになります。

この状態から「色味がおかしいので調整したい、本来暗かった場所が明るく写りすぎている気がするので明るさの調整を。」となったとき、調整できなくはありませんが、6MBの情報から修正することになるので、画質が落ちてしまいます。

これが、

撮影後、色味や明るさの加工を行うときRAWの方が高画質の画像ができる

ということになり、

「RAW現像は高画質」
という言葉がネット上に転がるようになったと言えると思います。

RAW現像が有効活用できる場所やシチュエーション

サンリオピューロランド、というテーマパークがあります。このテーマパークのパレードでは青、緑、赤など様々な色のLEDが点灯して、パレードの演出を盛り上げてくれるわけですが、被写体であるキャラクターに例えば青色の光源が当たってしまうと、本来白とピンクで構成されるキャラクターであるマイメロディがマイメロらしい色を失ってしまいます。

この時、マイメロがマイメロらしく写るためにRAWで撮影したのち、青色をキャンセルアウトする作業を行えば、良いことになります。

※詳細
[blogcard url=”http://shimaphoto03.com/photo/puro-raw/”]

このようにRAWは光源の色が目まぐるしく変化する場所や同一写真内で明暗の差が大きくなりすぎてしまうような場所に使うと非常に有効です。

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