前回(第5回)はネットワーク分野を取り上げ、OSI参照モデルやTCP/IP、ルータ・スイッチなどの基礎を学習しました。今回(第6回)は、データベースにフォーカスします。現代の情報システムでは、データベースが非常に重要な役割を担っています。基本情報技術者試験でも、データベース関連の問題は午前試験・午後試験ともに頻出領域です。
本記事では、リレーショナルデータベースの基本概念、ERモデル(エンティティ・リレーションシップモデル)の描き方、正規化の考え方、SQLの代表的な文法など、出題頻度が高いポイントを中心に網羅的に解説します。また、トランザクション管理や並行制御(ロック機構)といった応用的な内容にも触れ、午後試験対策にも役立つ知識をまとめていきます。
リレーショナルデータベース(RDB)は、表(テーブル)の形式でデータを管理するシステムです。1つのテーブルは行(レコード)と列(カラム)の二次元構造で表されます。各行に1件分のデータ、各列に属性(例:名前、住所、年齢など)が対応します。
リレーショナルモデルでは、「関係演算」(選択、射影、結合など)を用いて複数テーブル間のデータを扱うことが可能です。実際にはSQLを使ってこれらの操作を行うのが一般的です。
テーブルを作るときは、各行を一意に識別するための主キー(Primary Key)を定義します。主キーには必ず他の行と重複しない値が入るよう制約を付けます。例:社員テーブルなら社員番号、商品テーブルなら商品コードなどが主キーになりやすいです。
基本情報技術者試験では、主キー・外部キーの定義や、外部キー制約(外部キーが参照先の主キーに存在しない値を取れない、など)に関する問題がよく出題されます。テーブル間の紐づけを正しく理解するためにも、キーの概念はしっかり押さえておきましょう。
データベース設計を行う際、現実世界の事象を「エンティティ(Entity)」「リレーションシップ(Relationship)」「属性(Attribute)」として抽象化し、ER図(ERD: Entity-Relationship Diagram)を作成する手法が一般的です。
ER図でよく使われる表記法に、IDEF1XやChenの記法などがあります。試験問題では、以下のような観点が問われることが多いです:
ER図では、エンティティ間の関連が「1対1」「1対多」「多対多」のいずれかになるかを明示します。この多重度が適切でないと、データ構造に不整合が生じやすくなります。
多対多を直接テーブルに持たせると複雑になりやすいため、中間テーブル(リレーションテーブル)を置いて「1対多」×「1対多」の形に分解するのが基本的な設計手法です。基本情報技術者試験でも、この多対多の解消方法が問われることがあります。
この段階で得られたER図をもとに、論理データモデル(テーブル設計)を行い、最終的には物理データベース設計(インデックスやパーティションなどの詳細設計)へと進みます。
正規化とは、データの重複や不整合を防ぎ、効率的で整合性の高いテーブル構造を設計するための手法です。以下に代表的な正規形とポイントをまとめます。
さらに高次の正規形としてBCNF(Boyce-Codd Normal Form)などもありますが、基本情報技術者試験の範囲では第1~第3正規形を正しく理解できていれば十分です。問題としては「以下のテーブルは第何正規形か」「正規化手順を踏まえて設計し直すとどうなるか」といった出題が多いです。
RDBを操作・定義するための標準言語がSQL(Structured Query Language)です。基本情報技術者試験では、データ操作言語(DML)とデータ定義言語(DDL)が問われることが多いです。
SELECT文は試験でも頻出です。代表的な構文例を示します:
SELECT カラム名1, カラム名2, ... FROM テーブル名 WHERE 条件 GROUP BY グループ化条件 HAVING グループ条件 ORDER BY ソート条件;
また、JOINを用いた結合や、サブクエリなど、複数テーブルを操作する手法も重要です。基本情報技術者試験では、内部結合(INNER JOIN)や外部結合(LEFT OUTER JOINなど)に関する問題もよく登場します。
加えて、制約(CONSTRAINT)の定義もDDLの重要要素です。主キー(PRIMARY KEY)や外部キー(FOREIGN KEY)、一意制約(UNIQUE)などを設定し、データの整合性を高めます。
データベースにおけるトランザクション(Transaction)は、一連の処理をまとめて1つの単位として扱うものを指し、途中でエラーが発生すればロールバック、すべて成功すればコミットを行います。銀行の振込処理など、複数のUPDATEが同時に行われる場合のデータ整合性を保つために、非常に重要な仕組みです。
トランザクションには、次の4つの特性(ACID特性)が求められます:
試験では、「トランザクションの4つのACID特性」として問われることがあるので、キーワードを確実に押さえておきましょう。
複数のトランザクションが同じデータを同時に更新しようとすると、デッドロックや不整合が発生する恐れがあります。これを防ぐため、ロック(排他制御)の仕組みを用います。
さらに、ロックの粒度(テーブル単位、ページ単位、行単位など)や、2相ロック(Two-Phase Locking)の概念も重要です。試験では、「なぜロックが必要なのか」「ロック機構とACID特性の関係」などを問う問題が出題されます。
これらは午前試験だけでなく、午後試験のDB問題でも頻繁に登場するテーマです。過去問や演習問題を通じて慣れておくと、実際の試験で落ち着いて対応できるでしょう。
今回は、データベース基礎としてリレーショナルモデルの考え方からER図の描き方、正規化、SQL、トランザクション管理までを一通り解説しました。基本情報技術者試験では、データベース分野で一定以上の得点を取ることが合格に大きく寄与します。今回取り上げたポイントをマスターすれば、午前・午後試験ともに得点源にできるでしょう。
次回は、引き続きデータベースや情報システムの話題にも関連するアルゴリズムとプログラミング基礎を深掘りしていく予定です。お楽しみに!