この連載では基本情報技術者試験の合格を目指して、全20回にわたり基礎から実践までを解説しています。前回までに試験概要と効率的な学習計画を固め、いよいよ本編のテクニカルな内容へと踏み込んでいきます。
今回(第3回)は、午前試験で頻出となるハードウェアの基礎分野に焦点を当てます。コンピュータの中枢であるCPU(Central Processing Unit)、その周りを取り巻くメモリ、そしてさまざまな種類が存在するストレージについて、基本的な仕組みや用語を一挙に整理しましょう。これらの知識は、他の分野(OS、ソフトウェア、ネットワークなど)を理解するうえでも土台となる重要領域です。
CPUは「中央処理装置」と呼ばれ、コンピュータの頭脳にあたります。プログラムの命令を解読し、演算・制御を行うことでシステム全体を動かしています。
CPUはメモリから命令を取り出し(フェッチ)、解読し(デコード)、実行結果を再び格納(ストア)するプロセスを高速に繰り返します。
CPUの処理速度を示す指標としてよく挙げられるのがクロック周波数(GHz単位)。これはCPU内部で発生するクロック信号の周期で、これが速いほど多くの命令をこなせます。また、命令を段階的に分割し並行処理を可能にする「パイプライン処理」により、同一クロック周波数であってもより効率的に命令を実行できます。
近年は1つのCPUパッケージ内に複数の演算コアを内蔵したマルチコアCPUが主流です。これにより並行して複数の命令列を同時実行することが可能となり、パフォーマンスが大幅に向上します。
メモリはCPUが直接アクセスしてプログラムやデータを保持するための記憶装置ですが、速度や容量、価格の面でいくつかの階層が存在します。これをメモリ階層(メモリヒエラルキー)と呼びます。
階層 | 代表例 | 特徴 |
---|---|---|
最上位 | レジスタ | CPU内蔵。極めて高速、容量は極小。 |
高速層 | キャッシュメモリ | CPU内または近傍に配置。高速・容量小。L1/L2/L3などの階層がある。 |
主記憶 | メインメモリ(RAM) | CPUが直接アクセスする揮発性メモリ。容量大だがキャッシュより遅い。 |
下位層 | ストレージ(HDD/SSD) | メインメモリより大容量だが、アクセス速度は遅い。非揮発性。 |
メインメモリとして使われるのは基本的にRAM(Random Access Memory)。主にDRAMやSRAMが用いられます。一方、起動時のBIOS/UEFIの格納などで用いられるROM(Read Only Memory)は、基本的に書き換えが困難または制限的であり、電源OFFでも内容が保持されます。
CPUは非常に高速に動作しますが、メインメモリはCPUより遅いため、命令やデータを取り出すときに待ち時間が発生します。そこで、高速なキャッシュメモリを間に挟み、よく使うデータをキャッシュに格納して高速なアクセスを可能にしています。
ストレージはプログラムやデータを永続的に記憶する装置で、電源を切ってもデータが残る非揮発性メディアです。近年はHDDからSSDへの移行が進み、多様な選択肢があります。
CD、DVD、Blu-rayなどの光学媒体や、USBメモリ、SDカードなどのリムーバブルメディアもストレージの一種です。これらはバックアップやデータ移動に使われ、容量・速度・耐久性・価格の点でさまざまな選択肢があります。
サーバ環境などでは複数のストレージを組み合わせて冗長化・高速化を行う技術の総称としてRAID(Redundant Array of Independent Disks)が用いられます。RAID 1(ミラーリング)やRAID 5(パリティ分散)などが代表的で、耐障害性向上や性能向上を狙います。
基本情報技術者試験の午前問題では、ハードウェア分野から下記のような問題が出題されます。
特に、抽象的な用語定義だけでなく「どの階層がどれほど高速なのか」「どの装置がどのような役割を担っているのか」という相対的な理解が重要です。また、コスト・速度・容量・耐久性など、観点を複数持っておくと問題をスムーズに解けるようになります。
次回(第4回)は、ハードウェアに続いてソフトウェア基礎に焦点を当てます。OSやミドルウェア、アプリケーションソフトウェアの役割や特徴を理解することで、コンピュータ全体の構造をより深く把握できるようになります。ハードウェアとソフトウェアは車の両輪のような存在です。しっかりと理解して次のステップに備えましょう。