前回(第14回)は、データベース分野の午後問題を取り上げ、正規化やSQLクエリ、トランザクション管理などを詳しく解説しました。今回は、基本情報技術者試験の午後試験でもよく出題されるネットワーク・セキュリティ問題に焦点を当てます。
ネットワークやセキュリティは企業のITインフラを支える重要領域であり、OSI参照モデルやTCP/IP、ファイアウォール、不正アクセス対策など、多岐にわたる知識が必要です。本記事では、午後試験特有の長文問題を念頭に、どのように読解し、設問に答えるかを体系的にまとめます。午前試験の知識を応用しながら、午後で得点源にできるよう理解を深めていきましょう。
ネットワーク・セキュリティ問題は、午後試験で以下のような形式が多いです。
長文を読み込んで、ネットワーク構成やセキュリティ要件を把握し、設問ごとに短い計算問題や設定の不備指摘、最適な対策の提案などを行うパターンが多いのが特徴です。
午前試験で学ぶOSI参照モデルやTCP/IPの各層、プロトコルの仕組み(HTTP, FTP, SMTP, DNSなど)は午後試験での基礎的な土台となります。午後試験では、これらの技術を使って「実際にどう通信が流れるか」や「どのポートを開放する必要があるか」、「不正アクセスを防ぐための設定」など具体的に考えられるかが問われます。
ネットワークの概念モデルであるOSI参照モデルは、以下の7階層に分かれています。
午後試験では「ある通信で生じた不具合がトランスポート層かアプリケーション層か」といった視点で誤設定を突き止めるケースが見られます。各層が何を担当しているかをしっかり把握しておきましょう。
TCP/IPモデルは4階層(あるいは5階層)構造として整理されることが多く、OSIモデルの7階層と対応づけて学びます。
午後試験では、OSI第3層=ネットワーク層やOSI第4層=トランスポート層といった言及が出てくる可能性が高いので、用語の混同を防ぎましょう。
午後問題では、ネットワーク構成図に「インターネット」「ルータ」「スイッチ」「ファイアウォール」「DMZ」「内部LAN」「サーバ群(Webサーバ、DBサーバなど)」が描かれることがあります。読み取りのポイント:
問題文に「どの機器がどのサブネットに属しているか」「どのプロトコルを通すルール」などが記載されていれば、どこに設定ミスがあるか推定しながら読むのが効果的です。
ネットワーク問題では、IPアドレスやサブネットマスクの計算問題が出題されることもあります。例:「192.168.10.0/24を4つのサブネットに分割するとしたら、サブネットマスクはどのようになるか」など。
午後試験でこれが出たら、紙に2進数のビットを割り振りながら計算すると安心です。暗算でミスしないように注意しましょう。
ファイアウォールに関する設問では、アクセス制御ルール(ソースIPや宛先IP、ポート番号、プロトコルなど)を設定した例が出ることが多いです。問題文に以下のような表が示される場合も:
No. 源IP 宛先IP ポート プロトコル アクション 1 ANY 192.168.1.10 80 TCP ALLOW 2 ANY 192.168.1.10 443 TCP ALLOW 3 192.168.0.0/16 ANY ANY ANY DENY ...
設問例:「HTTPS通信が通らない原因はどのルールが原因か」「外部からSSHで接続できないようにするにはどう設定すべきか」など。アクセス順序や最優先ルールに気を付けつつ、どのパケットが通過/遮断されるかを頭の中でシミュレートするのが鍵です。
近年の試験では、VPN(仮想プライベートネットワーク)やIDS/IPS(侵入検知/侵入防止システム)が登場することもあります。主な知識ポイント:
午後試験では、VPNの設定例が示され、「なぜ暗号化により盗聴が防げるか」を説明したり、「IDSがアラートを出す仕組み」を述べさせたりする問題が出る可能性があります。
セキュリティ問題でよく見かける脅威の例:
午後問題ではこれらの攻撃例が書かれ、「被害を防ぐにはどのような対策が必要か」を問う記述問題がよくあります。WAF(Web Application Firewall)の導入やパラメータエスケープなど具体的な対策をイメージできると得点しやすいです。
ネットワーク・セキュリティ問題は長文と図表がセットになっていることがほとんどです。まずは全体構成(ネットワーク図やセキュリティ要件など)をざっくり読み、「どんなシステムか」「どの機器が配置されているか」「セキュリティポリシーはどうなっているか」を掴みます。その後、設問を先にチェックして、必要な箇所に焦点を当てながら再度本文を読むと効率的です。
たとえば、ファイアウォールのルール表があるなら、紙に転記しながらルールを順に見て不備を探す。ネットワークアドレスやサブネットを計算する問題なら、IPアドレスを2進数で書き出すなど、部分的な問題に着目してメモを作る習慣が重要です。頭の中だけで処理するとミスが増えがちです。
「不正アクセスを防ぐために何が必要か」など記述問題の場合、試験対策として以下のように答えるとわかりやすいです。
字数制限がある場合は、結論→根拠→具体例の順で簡潔にまとめると高評価が期待できます。
他の分野と同様、過去問演習が何よりも効果的です。少なくとも直近3〜5年分を解き、以下を重点的に確認しましょう。
解答解説を読み、「なぜそうなるのか」を理解することが大切です。単なる丸暗記ではなく、構成図を読んで設定や通信経路を想像する力を養いましょう。
OSIモデルやTCP/UDP、IPアドレス、ルーティング、ポート番号などの基本的な午前知識を復習しておくと、午後の読解が非常にスムーズになります。例えば、
「午前対策をひと通りやったからOK」と思わず、午後問題に絡む部分を意識して再整理すると効果的です。
もし余裕があれば、ルータやファイアウォールの設定を試すソフトウェア(Packet TracerやVirtualBoxでのLinuxルータなど)を使い、簡易的なネットワークを構築してみるのも理解が深まります。
実務経験がある方は、自社や学内ネットワークの例をイメージするだけでも、「ここで外部からのSSHを遮断する設定は…?」など具体的に考えるきっかけになります。
ネットワークやセキュリティの分野は、実務でも極めて重要かつトラブルが起きやすい分野です。試験対策を通じて、どのレイヤーで何が起こっているかをイメージしながら勉強しておけば、午後試験で高得点が狙いやすくなるだけでなく、実際の業務にも大いに役立ちます。
次回(第16回)は、システム開発やマネジメント系問題への対応を取り上げ、ソフトウェア開発プロセスやPMBOK的なプロジェクト管理、リスク評価手法などを詳しく掘り下げる予定です。お楽しみに!