前回(第13回)は、アルゴリズム問題の攻略について解説し、疑似言語やデータ構造、典型的なソート・探索のパターンを学習しました。今回は、午後試験でも人気かつ頻出のデータベース問題に焦点を当てます。
データベース問題では、ER図や正規化、SQLクエリの読解や作成、トランザクション管理など多岐にわたるテーマが扱われます。どれもITエンジニアにとって重要な知識領域であり、しっかり勉強しておけば午後試験の得点源になること間違いなしです。この記事では、午後問題に特化したデータベースの読み解き方と解答手順を詳しく解説します。
基本情報技術者試験の午後問題では、データベースに関する大問が出題されることが多く、以下のような構成になるケースが典型的です。
大半が長文形式で、テーブル構造やサンプルデータが示され、その上で数個の設問に答えるパターンです。内容は実務をイメージしたものになっており、どれだけ実践感覚をもって理解できるかがポイントとなります。
具体的にはこんなイメージの問題が出されます。
いずれも午前試験の知識がそのまま活用できる反面、長文読解と応用力が必要とされます。
データベース問題では、エンティティ(表)とリレーションシップ(関係)を示すER図が出題されることがあります。把握すべきポイントは:
問題としては、「どの属性が主キーとしてふさわしいか」「外部キーはどれか」「リレーションシップの多重度を間違えた場合、どんな不都合があるか」などが問われます。
また、正規化に関する問題も定番です。第1正規形〜第3正規形にかけて:
午後試験では、1つの大きなテーブルが与えられ、「このテーブルを正規化せよ」「適切な主キーと、切り出すべき属性を示せ」といった出題形式があります。正規化の落とし穴として、
過去問を通じて「正規化するときにどんな視点で分割するか」を身につければ、解答もスムーズになるでしょう。
午後試験では、SQL文を読み解き、結果セットがどうなるかを問われる問題が頻出です。特にSELECT文の以下の要素を着目して確認しましょう。
SELECT カラムA, カラムB, ... FROM テーブルX [JOIN テーブルY ON 条件] WHERE 条件式 GROUP BY ... HAVING ... ORDER BY ...
設問例:「このSQLを実行すると、商品ごとの受注件数が多い順に表示される。3番目に表示される商品IDと件数を答えよ」など。
対策としては、問題文のサンプルデータを見ながら実際にデータをグループ化・集計してテーブルを書き出すと効果的です。また、複数テーブルをJOINしている場合は、結合条件を見落とすと答えがずれてしまうので注意しましょう。
SQLではSELECT文だけでなく、INSERT・UPDATE・DELETEが出ることもあります。特に以下の点が問われやすいです。
午後試験だと、「このUPDATE文を実行しようとするとエラーが出る。その原因は何か」といった設問が出る可能性があります。制約や関連テーブルとの関係をしっかり理解しておきましょう。
基本情報技術者試験では、トランザクション管理やロールバック、コミットの仕組みが出題されることがあります。特に有名なのがACID特性(原子性・一貫性・独立性・永続性)です。
設問例:「コミットした後にサーバが落ちたが、データは正しく保存されていた。この特性はACIDのうちどれに該当するか」=Durabilityなど。
また、排他制御やロックに関する問題も午後試験で登場します。典型的には:
さらに、デッドロックが発生する状況(2つのトランザクションがお互いが保有するリソースを待ち合う状態)を問われ、「どのような回避策があるか」を答えさせる問題もあります。2相ロック(Two-Phase Locking)などの原理を知っておくと理解が深まります。
まずは問題文全体を眺め、システム概要とテーブル構成を大まかに理解します。ここで意識すべきは:
細部に入る前に全体構造を把握すると、次のステップが格段にスムーズです。
午後試験では、長文問題を最後まで読まなくても「設問」を先にチェックするやり方がおすすめです。特にデータベース問題は「どのSQLクエリの実行結果を答えよ」「ここに追加すべき外部キーを答えよ」など、ゴールがはっきりしている場合が多いです。
SQL文やER図を見ながら、テーブル構造やサンプルデータをメモとしてまとめます。例:
顧客テーブル (Customer) -------------------------------- 顧客ID(PK): int 顧客名: varchar(50) 住所: varchar(100) ... など 注文テーブル (Orders) -------------------------------- 注文ID(PK): int 顧客ID(FK): int 商品ID(FK): int 注文日: date 数量: int ... など
正規化や制約などは、この構造メモをもとに考えると理解しやすいです。
それぞれの設問で必要な作業が変わるので、以下の流れを意識します:
答えを出したら、余裕があれば見直しして論理的に破綻がないか確認します。
データベース問題の対策は、過去問の反復演習が最も効果的です。3〜5年分の過去問を通じて:
を把握し、実際に解答プロセスを試してみましょう。解説を読むだけでなく、紙に表を書いてSQL結果を導くなど実践的に取り組むのがポイントです。
可能であれば、ローカル環境でデータベース(MySQLやPostgreSQLなど)を使い、簡単なテーブルを作ってSQLを実行してみましょう。
現実にSQLを動かす経験があれば、午後試験のSQL問題でも「このJOINだとこうなるな」と直感的にわかるようになり、回答スピードと正確性が高まります。
午前知識×午後応用力を統合するために、市販の模擬試験問題集やオンラインの模試を利用するのも有効です。時間配分を意識しながらデータベース問題を解くことで、本番同様のプレッシャーを体験しながらトレーニングできます。
データベースは午後試験での得点源になりやすい分野です。基礎知識を固め、問題文の実例に即した演習を重ねておけば、高いスコアが期待できます。次回(第15回)は、ネットワーク・セキュリティ問題の対策を取り上げ、OSI参照モデルやプロトコル分析、ファイアウォール設定などについて解説する予定です。お楽しみに!